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ある意味、とても怖い映画でした、映画「さんかく」。

今回もネタバレありです。なお、非常に予告編とイメージが変わるはずなので、観たい人はここを読まずに、覚悟してから*1観てください。


さて。最初の「なんじゃこりゃ、この妹は」という不思議な冒頭や、主人公のちょっと頭が悪いというか、そりゃあ駄目でしょ感はともかく、中盤の展開の読めなさと、怖さが半端ない映画です。
なお、映画の予告では「さんかく」のタイトルが、まるで三角関係のような甘いイメージに捉えられるような感じになっていますが、実際にはこの「さんかく」は、互いに違う相手を見つめているズレを示す言葉としての「さんかく」ですよね。


冒頭、妹が先輩に会いに行って、彼女が居る発言に、先輩の職場*2にバレバレのストーカー行為をするのですが、この事が実行者を変えて、繰り返されるのは予想していませんでした。
主人公は結構バカと言うか、愚かでして、そこが映画でのポイントな気がした。実際、私の感覚では、あの程度の状況では彼女とも別れないし、妹の行為も本気には取りません*3。だけど、主人公は冗談めかして語る、妹への思いは実際には本気*4だったらしい...。
妹が実家に帰り、主人公が同棲を解消したあたりで、物語の方向性がガラリと変わり、かなりシリアスかつ怖い展開の中盤の話になります。色々事件が起きるのですが、ここの田畑智子さん演じる佳代が、すさまじく怖い。
ちなみに、物語の終盤で判明するのですが、一部の犯罪的な行為は、実は佳代ではなく、主人公の職場の同僚の仕業なんですね。でも、中盤の時にはそれは分からないから、全部が佳代の仕業に思えて、それもあって非常に怖い展開になってます。
まあ、それぞれが犯罪行為ですし、実際は対象となる人間に問題となる内容が無くても発生しえるのがストーカー行為なので、安易に対象となった人間の愚かさの話はしたくないのですが、この映画の主人公に限っては、かなり本人の行動に問題あって発生してしまったようにも思えます。
恋人のひたむきさや、ちゃんと本人の馬鹿さ加減を知っていて好きになってくれている状態を知らず、また妙に自信を持ってしまっている状態*5で、簡単に恋人と別れてしまう事や、同棲先を出た際に職場の後輩のところに少し住むのですが、その際のかなり無神経な行動*6とか、あれでは色々なトラブルを引き寄せてしまうと思う。
なお、佳代もある意味、ああなるのは予想できる部分もあって、見事にマルチ商法に引っかかっている*7し、自分の世界が恋人だけで占められていたら、場合によっては異常な行動に出てしまうと思う。
ただ、中盤の佳代の行動は非常に怖いです。知らないうちに自分の住居に侵入されてたり、実際にストーカー行為を受けた人が観たら、トラウマが再発してしまうのではないかと思えるほど、怖い。なお、自殺未遂の際の「お風呂に入っている」発言は、多分、嘘を言ったつもりではなく、雨に打たれている感覚が、手首を切っている内容もあって、そういう感覚を呼び覚ましたと思う。


ところで、終盤に最後のストーカー行為、主人公のストーカー行為が行われるのですが、私はこっちは醒めた目で見てましたね。結果も、ほぼ予想通り。年頃の中学生ならば、あんな感じだと思いますよ。私だったら、いつも留守電な時点で気が付くと思う。
結局、最後まで普通の男女の、結構「痛い」別れとストーカー行為の話でしたが、彼の心変わりの原因、妹の事を知った、佳代の最後の微笑*8が救いでした。多分、現実を把握できた後で、自分の心にも整理がついたんじゃないかな...。
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*1:観れば、なんで「覚悟して」と言ったか分かります。

*2:先輩の彼女は、職場の同僚。

*3:年齢で違法的行為になるのもあるけど、あの時期の少女の未確実さ、みたいなものは認識しているから。映画のラストで、妹さんが言った「子供だもん」って、かなり本当の話だと思う。ある意味、気まぐれ。

*4:私は観ていて、え?本気になるの、それ変だよ、と思ってましたが、映画の主人公は違っていた。

*5:物語のラスト近くで、妙な自信が見事に粉砕されたシーンが出てくる。喧嘩強いとか言っていると、そういう目に合うと思う。

*6:ビールの要求やら、床のフローリングの泡の汚れとか、やっている方は無自覚かもしれないけど、されている方にすれば、胸底にマグマ溜まりますよ。終盤の襲撃犯が彼だと判明した時には、かなり納得でした。ちなみに、自動車整備士の後輩も同じでしたね。

*7:あの後、どうなったんだろう。絶縁したのかな?

*8:これ、ラストシーンですよね。