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子宮頸がんにまつわる誤解を解いてみよう。

今日は「子宮頸がん」についてです。
私もある程度、発症機構など含めて知っていたのですが、改めて調べてみると知識が不正確であったり、間違えて覚えていたこともありました。また、その知識の不正確性のお蔭か、不幸な事件も起きているようですね。
なので、今回の内容では基礎情報を正確に書くようにしたいと思います。


まず、発症機構について。公益財団法人東京都予防医学協会 ヒトパピローマウイルスについて より。

子宮頸癌はほぼすべての例でHPV感染が関与していると言われています。また、ヒトに感染するHPVは100種類ほど知られていますが、その中で子宮頸癌を引き起こすウイルスの種類(HPVの型)も分かっています。ただし、HPV感染のみで子宮頸癌は発癌しないようで...

http://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/women/sikyu/sikyu_08.html

特定の HPウィルス が関わっています。ただ、感染したから即時に発癌する癌ではないということです。


そして、ここが私も良く分かっていなくて、知識が不正確だったのですが、ウィルス感染した事が分かり難い事が多い。それは以下の理由から。

感染しても自然に、また短期間でウイルスが消えてしまいます。感染している時に検査をして初めて感染の事実が分かります。

http://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/women/sikyu/sikyu_08.html

...つまり、ウィルスに感染したかどうかは、感染してウィルスが居る時に検査をした場合に分かるのであって、感染した場合でも、ウィルスが消失していた後に検査した場合には、感染したのに検査には出ない、という事になります。
ウィルスが消失するんだ、じゃあ安心だ、とはならないところが、この病気の怖いところ。

高危険群*1が感染しても大部分の例において自然にウイルスは消えて(排出)しまいます。長期持続的な感染が問題になりますが、高危険群HPVが3年以上感染を継続すると発癌の可能性が高まります。なぜ長期に感染が持続する例と短期間で消失する例があるのか、その原因は分かっていません。また、発癌することなく長期に感染が持続している例も存在しています。

http://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/women/sikyu/sikyu_08.html

ウィルスが短期で消失するケースだけではなく、長期感染が継続する場合があり、その場合に三年以上感染が継続すると、発癌する場合が出てくる。
そして、ここが肝心なんですが、短期で消失する例と長期感染継続の例の、違う原因が分かっていない、という事。
おまけに、発癌する事なく長期感染している例まである、と。結局、こういう状況だと感染時の発癌の可能性って、運が悪ければ、という感じになってしまいますよね...。


ところで、HPV は性感染症の側面も持っており、男性も感染に介在する訳ですが、男性の発癌に関わっていないのでしょうか。
実は関わっています。男性の癌としての意識は薄いと思いますが、子宮頸がん 原因をめぐってこんな大論争ご存じですか(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(3/6) より。

HPVのなかでも6型、11型は男性も発症する尖圭コンジローマを引き起こします。男性の陰茎がん、肛門がん、咽頭がんなども16型、18型のHPVが原因となる場合がありますが、発生頻度が子宮頸がんの10%程度と低いのです*2

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36565?page=3

実は女性の病気だけではなく、男性も各所に癌を発生する可能性がある、という事です。ただし、女性の子宮頸がんよりも発生頻度が低い、と。
元々、子宮頸がん自身も感染したから癌になる、と決まっている訳ではないので、それよりも発生頻度が少ない男性は、さらに発生確率が下がっている訳です。ただし、可能性は低いながらも存在している訳で、そういう意味では男性も HPV 感染の危険性を意識した方が良いという事でしょう。


ところで、性感染症であり、女性のみ発癌の確率が高いとなると、世の中の良からぬ男性は、パートナーを迫害するのではないか、という恐れが出てきます。実は、さきほどの紹介記事では、その点に於いての問題点が指摘されていました。
しかし、詳しくは記事を読んでもらえばわかりますが、それはちょっと待ってくれ、という事実関係があるのですね。先ほどの記事から、少し引用しておきます。

最終的に子宮頸がんになったからといって、即、たくさんの男性と遊んでいるとか、浮気しているという論理は成り立ちません。そもそも子宮頸がんのなかにはHPVが原因でないものもある。処女でも子宮頸がんになった人はいるのです*3

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36565?page=4

記事には実際の経験人数と、子宮頸がんになった際の関連状況も書いてあるのですが、経験人数が 0 と 1 では違いがあるものの、他の場合では違いがある事にはなっていません。
要するに、「子宮頸がんになったから、たくさんの男性と遊んでいる」みたいな事を言いだすのは、単なる妄想であって事実ではない、という事ですね*4


ところで、HPV に関してはワクチンがあります。原因が明確に分かっている、という意味では防止することが容易な癌*5という事で、リスクが高い女性や、志が高い男性にもワクチン接種をお勧めします。

関連リンク
公益財団法人東京都予防医学協会 ヒトパピローマウイルスについて
子宮頸がん 原因をめぐってこんな大論争ご存じですか(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)
http://home.nms.ac.jp/page/401.html
子宮頸がん予防ワクチンQ&A|厚生労働省

*1:子宮頸癌を引き起こすとされている、HPV の特定の型の事。16, 18, 52, 58型など。

*2:日本家族計画協会クリニック所長の北村邦夫氏

*3:国立国際医療研究センター・国際感染症センターで感染症対策専門職を務める堀成美氏

*4:「処女でも子宮頸がんになった人はいる」のは知らんかった。そういう場合もあるのか...。

*5:全面的に防止できると決まっている訳ではありませんが。