luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

何故、いわき湯本温泉ホタルプロジェクトでの、ホタル幼虫放流自体が問題なのか。

http://www.f-hotaru.jp/about/』のニセ科学的な問題*1、それだけが問題なのではありません。
アクアマリンふくしまの人の指摘『復興ブログの終了について - アクアマリンふくしまの復興日記*2』は、生物環境のことを考えたときに、実は重大な問題を指摘している、という上でも、重要なのです。
ブログ上での内容という事で、私は、実はブログ記事でも指摘事項は少なく留めている、と思っています。本人のブログ終了宣言の記事なので、実際のホタル幼生放出の問題は抑えて語られています。
実際に、ホタルの幼生放出自体には『復興ブログの終了について - アクアマリンふくしまの復興日記』で指摘されている問題があります。

熊川水系のDNAを持つゲンジホタル300匹が湯本川調節池に放流

分子生物学の進歩により、遺伝子の解析が進む中で、ようやく他地域からの生物の放流を極力、行わないように注意を払うようになってきました。

http://megalodon.jp/2012-0724-0612-56/blogs.yahoo.co.jp/fukushimaaqua/9326268.html

ホタルの他地域の種に関しての問題、の指摘について。


ホタル保護と再生の今日的問題』より。

ホタルの他地域への移動に関する問題

ホタルの遺伝子型グループについて...

http://www.tokyo-hotaru.com/jiten/subject.html

↑このタイトル以降の項目に、詳細な説明があります。

その地域に固有の遺伝学的特徴が失われたりする、「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまいます。

http://www.tokyo-hotaru.com/jiten/subject.html

実際には各種の遺伝子グループの混在によって、その流域、地域のホタルの生物種的な多様性が保たれているわけであり、それを乱すことになる、という事です。
現実には、文中で「関東型のハプロタイプだけを持つ地域は6カ所のみで、その他の地域では、西日本型や中部型が混在しています。」と語られている通り、既に本来の生物種の地域性が消滅してしまっている流域もあります。


また、幼虫放流をすると、何で問題*3なのか。

ホタルの幼虫放流に関する問題

養殖したホタル幼虫を放流するだけでは、ホタルが定着し自然発生する環境は取り戻せません

(中略)
「幼虫を飼育して放流」するということが、各地で盛んに行われています。ホタルの里親制度として、種ボタルを採集し、沢山産卵させて、孵化した幼虫を地域の方々が自宅で養殖し、3月頃に大きくなった幼虫を川へ放流するということも、当たり前のように行われています。これらは、「ホタルを守る」「ホタルを殖やす」ことを目的に行われていますが、この行為だけを繰り返すだけならば、「ホタルを守る」「ホタルを殖やす」ことにはつながりません。

ホタルが自然発生する良好な環境では、1匹のメスが産んだ卵から翌年成虫になるのはたった数匹でしかありません。一見少ないように見えますが、実際はこれに、2年・3年越しで羽化した成虫が数匹加わり、これで、その場所のホタルの集団は遺伝的形質も単純ではなく、また数も極端に減少することなく存続しているのです。そこには豊かな生態系が存在し、そのバランスの中でホタルは生息しています。
 ホタルの生息できる環境を整えれば、放流を繰り返さなくてもホタルは定着するでしょう。”なるべく多くのホタルに舞ってほしい。”誰もが願うことです。しかし、人々はホタルの飛ぶ数だけにこだわり、ホタルの生態までも無視して、人々の手で幼虫を大きくなるまで育てています。ホタルの成育を人間がコントロールしてしまっているのです。
ホタルのオスとメスを捕獲して採卵し、水槽では、充分な数のカワニナを”餌”として与えて養育します。こうして育てた場合は、孵化数の20%の幼虫が、たった5ヶ月で終齢幼虫に成長するのです。自然界では絶対にあり得ないほどの数の幼虫が、しかも場合によっては、同じ親をもつ幼虫たちが放流されるのです。
人工養殖によって生存率を高めた沢山の幼虫の放流は、同じような遺伝子を持つ個体の増加につながり、それを何世代も繰り返せば地域集団の遺伝的多様性を失います。その結果、環境への適応性や病気(細菌)等への抵抗力がなくなり、極端なことを言えば、絶滅する危険性もあるのです。

http://www.tokyo-hotaru.com/jiten/subject.html

...結局のところ、幼虫を放流して、その地域のホタルの数が保たれているとしたら、それは人間の、自然環境を利用した、ホタルの養殖のようなもので、自然に正しく根付いている状態ではありません。
ホタルの数が保たれているのが、幼虫の放流のせいだとしたら、それは単に「毎年、人間がその地域に幼虫を播いているから」という事です。つまり、幼虫放流を止めたら、ホタルの数が保てないのなら、環境保全等の面で、その環境がホタルの自然定着に適さない環境になってしまっている、という事です。
実際に大熊町では、『http://www.town.okuma.fukushima.jp/hotaru_201206.html』にあるように、

私たちは、現在、残念ながらふるさと大熊町でホタルを見ることはできません

http://www.town.okuma.fukushima.jp/hotaru_201206.html

...と書かれています。
という事は、大熊町はそこにいたホタルは、自然消滅してしまっているのであり、ホタルの定着に適さない自然環境になっている可能性もあるように思います。
そして、幼虫放流によるホタルの数の確保を行えば、既に引用した部分にあるように、遺伝子多様性を失うことにより、環境変化や病気などにより絶滅し易くなる状況にも陥ります。


現在、いわき湯本温泉ホタルプロジェクトは、『ナノ純銀除染 - Togetter』にあるように、技術顧問に控えめに言っても大きな問題があります。
...で、そしてそれゆえ、今までのプロジェクトが間違っていたことを表明し、謝罪し、プロジェクト関係の掲示を修正する広報をするだけで、該当地域の信頼回復が成されるとは、思えません。それは、何故か。


まず、スピードの問題。この話題、指摘されてかなり時間が経ってしまっています。
広報としては素早い「指摘問題点への対応の姿勢表明」が重要であり、企業コンプライアンスの面から見ると、あまりに対応がのろい、と思います。良くない評判や、批判というものは、すぐに伝播されるので、初動でちゃんと対応する旨の姿勢をみせないと、その後の企業活動に多大な影響を与えるので、みんな素早く対応します。
ひとまず、何も表明されていないので、このままやり過ごせる、と思っているかもしれませんが、それは無茶でしょう。既に不評はかなり拡散してしまっていますよ。...そして、この拡散は告発行為*4ではなく、自身の間違ったプロジェクト内容にあるのは、色々なところで既に指摘*5されている。


そして、内容の問題。ここに書いたように、ホタルの幼虫放流自体に、こういった難しい、込み入った問題がある*6訳です。


この問題を解決する技量を持っている人を捜すとしたら、まず目につくのは、今件の告発者、ですよね。
実際に、こういった複雑な問題を解決できる技量を持ち、地元を愛していると思われる人、と言ったら。
私自身は、告発者への抗議文を一生懸命考え、「告発者が編集権を持たず、それゆえ謝罪文を簡単に載せられるようなメディアでもない紙上での謝罪」にこだわっている暇*7 *8があったら、その告発者に頭を下げて、今件の問題解決に協力してもらうのが優先じゃないかと思うのだが。


そして、まとめに書いたとおり、それに失敗して、告発者の失職となる事態を招けば、復興なんて成功するとは思えない。

ホタルの人工放出について。 http://www.tokyo-hotaru.com/jiten/subject.html

問題点の所に詳しく書いてあります。これで、 OK ?

...読んでもらえば分かってもらえると思うけど、ホタルの養殖幼生の放出自体が問題を持っているので、アクアマリンふくしまの中の人の辞職で、本質的な問題は終わらない。

逆に、ここで、件の人の辞職を招いたら、問題は解決の糸口を失い、復興への道を見失うと思う。 だから、湯本の方の問題なんですよ。本質的には。

http://togetter.com/li/344183


...復興のために、必要な人材の指摘と、道筋は指摘しました。 後は、行動するか、否か、です。
適切な行動を取れなかったら、大熊町のホタルと同じ運命を辿る場合だってあると思う。...厳しい言い方だけどね。

関連リンク
http://www.f-hotaru.jp/about/
ナノ純銀除染 - Togetter

復興ブログの終了について - アクアマリンふくしまの復興日記*9

ホタル保護と再生の今日的問題

http://www.town.okuma.fukushima.jp/hotaru_201206.html

アクアマリンふくしま、私の想い、願い - Togetter

*1:参考『ナノ純銀除染 - Togetter

*2:消滅予定なので、魚拓の方です。

*3:元々のその流域の幼虫放流でも、問題になるのか。

*4:抗議文とか読んでいると、そう言いたい姿勢のようだが。

*5:告発自身が不適切だったら、不評として、こんなに話題になる事はないのですよ。

*6:実際には遺伝子の多様性の確認も含め、研究成果の総てがここでの結論を支持するわけではない。生物遺伝学、生物進化論でも未解明の部分は多く、総ての現象を説明できていません。今言えるのは、だいたいそうなるのではないか、というニュアンスの内容です。総ての生息域をシミュレートした論文などは存在しませんので。

*7:公表された抗議文に、そういう記述ありましたね。→『抗議文の画像』 ちなみに、名誉毀損等が裁判で認められた場合にも、名誉回復のための広告が要求として必ず認められる訳でもないので、ある意味、これは過大な要求と言えます。

*8:ちなみに、告発者本人を名誉毀損で訴えたら、湯本の復興なんて吹き飛ぶでしょうね。科学的事実に背を向け、ニセ科学を擁護するプロジェクトが、復興を起こせるわけないでしょう。

*9:大元は『http://blogs.yahoo.co.jp/fukushimaaqua/9326268.html