luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

血液型の話、第三話「最終的な血液の使用基準...あなたの血液を知る」。

注意:今回提示される内容は、医療事由を多く含みます。
そのため、不明箇所については、医療専門機関にご確認する事をお勧めします。不正確なことを書く予定はありませんが、より正確な情報を得たい場合には。

さて、ひとまず今回で、一回締めたいと思います。
前回まで、血液型試験の表試験、裏試験の存在、そして出生直後から新生児の血液型の安定判定までの変化を述べました。
今回、そういった血液型の判定の不安定さ、をどうやって安定させているか等に触れたいと思います。


第一話で、『http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/medical/medical_info002.html』の記事を参照しましたが、ちょっと引用してみます。

今後、患者さんに亜型が疑われた場合には、今回ご紹介したABO亜型分類に基づいて対応することで、実際の医療現場における輸血が円滑にしかも安全に実施できるものと思われます。ただし、輸血の最終可否判断は交差適合試験により行って下さい。

http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/medical/medical_info002.html

元々、亜型を疑われた場合の血液型検査について述べた文章でしたが、最終的には現場の輸血する血液型を判定する、最速の対応手段に整理されています。
また、ここで最重要となるとは最後の部分で、結局そうして決定しても、輸血の最終可否を「交差適合試験」によって決定している、という部分です。
この文章は、一般の成人の亜型について述べた文章ですが、この考え方の方針自体は、下記の部分で鮮明になります。

ここで少し意地悪な言い方をすれば、どの程度の反応を弱いと解釈するかは、検査者の判断に任されており、その検査者の扱い方一つで血液型が変わってしまうものなのです。しかし、このA型の亜型と判定された患者さんが輸血を受ける場合はO型の血液で問題はなく、実際の輸血においてはO型に分類したほうが良かったと言うことになります。

http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/medical/medical_info002.html

ここで述べられていることは、血液型判定でどう出ても、輸血を行うという事が重要なのだから、「血液型に関わりなく」輸血に適した分類で良い、という事です。例え、A型の亜型と判定されようが、輸血が可能な O型に分類して、実務上まったく問題ない、という事を言っています。
これは亜型の話ですが、子供の血液型判定についても、これに準じたことが言えます。
例え、一歳未満で検査判定が変に出るとしても、その記録や、その判定を以って、使用する血液型を決定するというのはあり得ませんよね。
実際に輸血して問題のない、という血液型を決定する必要があるわけですから。
...つまり、血液検査は「使用血液*1」のための検査であって、「血液型」を決定するための検査ではない、という事になります。
それゆえに、そういった不安定な判定を、ここで振り払っているわけですね。
そして、最後に「交差適合試験」で、実際の現実的問題が発生しないことを確認します。
これについては難しい内容となってしまうため、私の説明は省きますが、興味があれば『日本輸血・細胞治療学会 Q68. 交差適合試験の解釈について』や、『日本赤十字社 北海道赤十字血液センター 交差適合試験陽性例の血液製剤選択についておしえて下さい』、『http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/medical/medical_info001.html』を読んでみてください*2


どうでしたか?
実際には血液型というよりは、実務的な必要性からの「血液判定」であって、その中で血液型が判明するかも知れないけれど、それはあくまで二次的な結果であり、他の薬剤や治療を決定するのと同様に、最終的に問題が起きない対処方法を選択している、という事なんですね。


実際、リンク中にも出てくるのですが、過去のご本人の輸血歴や、病気や、その人の特異体質などにより、不規則抗体の存在を考慮しなければならなかったり、型どおりの考察ではうまく行かないこともあるようですね。
つまり、ご自分の血液とは、簡単に分類される数個の血液型というものではなく、そういった分類上の簡易なラベルがつくことがあるかも知れないけれど、あくまでそれは便宜上のもので、各自がそれぞれ固有に持っている血液の状態を、治療上の分類にあてはめるための単なるラベルに過ぎないことが分かります。
あなた自身は、あなたが生まれてから過ごして来た、それぞれの人生の結果として、それぞれ各人固有の血液を持っている*3、という事です。


よく血液型について、もしくは血液型検査の必要性について、必要以上に語る人がいます。しかし、私は今までに述べてきた内容から、それはさほど意識すべき内容ではない、と思っています。
唯一、気にしなければならないとしたら、非常に稀な血液を持っていて、輸血等がかなり難しいケース。
この人たちは、自分がそういう存在であることを知っておかなければならないと思いますので、そういう人は、ほとんどが自己の出生時にそれを知るとは思いますが、それを覚えておかなければならないと思います。
しかし、それ以外については、時に血液型検査の結果が違ってしまったりすることを考えれば*4、あんまり意識して覚えておくことは、また、焦って、血液型検査をしなければならない、というような事はないと思います。


まあ、献血などでは、自己の血液型をはじめ、HLA や、感染症などの有無を知ることもできます。献血の機会があれば、そういう時に知っておく。後は、輸血の際などに、自己の血液の免疫が変化する事があるので、そういった自己治療の内容があったら、自分の状態をよく覚えておく。
それで良いのではないかと、思います。

関連リンク
血液型の話、第一話「表と裏の試験」。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック
血液型の話、第二話「子供にまつわる、血液型検査の不確定さ」。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック

http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/medical/medical_info002.html
日本輸血・細胞治療学会 Q68. 交差適合試験の解釈について
日本赤十字社 北海道赤十字血液センター 交差適合試験陽性例の血液製剤選択についておしえて下さい
http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/medical/medical_info001.html

*1:もしくは血液を由来とする各種血液製剤

*2:それぞれのページからのリンクにも、関連の記事があります。

*3:今回は Rh型や、他の多種ある抗体、抗原には言及しませんでしたが、それらを考えれば、本当に各人固有の血液型を持っている、といって良いと思います。

*4:そういう事から、医療機関は自己申告があっても、血液型の再検査はごく普通に行われます。