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素朴に、名誉棄損罪の法益について考えてみた(事実の否定編)。

これは、おまけ。
素朴に、名誉棄損罪の法益について考えてみた。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック の注釈を付けようかと思っていたのですが、対を成すことに気づいたので、記事を起こしておこうかと思いました。
前篇の条文を読むと、事実の記載が必ずあるのに気づきます。
刑法(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)

   第三十四章 名誉に対する罪

名誉毀損
第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html

(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html

全部の条文にあります。
死者の名誉は表現が逆になってますが、同じ意味です。罰しない場合ですから、逆の意味でとらえれば、罰する条件になります。
つまりは、事実ではない内容を公然と適示すれば、(死者であっても)名誉棄損になる、という事です。
ただし、刑法上の構成要件は錯誤や有責の判定がありますし、実際には「記載されざる構成要件*1」というのもありますので、虚偽を適示したら、即時に名誉棄損として刑事告訴可能、とはならない*2でしょう。
民事の場合も、違法とされる範囲*3は、実際には条文通りという訳でもないようです。
とはいえ、虚偽の事実を積極的に適示すれば、基本的には違法なのですから、行動には慎重を期した方が良さそうです。

*1:判例による解釈調整が入ります。このため、構成要件は必ずしも条文そのままにはなりません。

*2:違法であるのと、刑事告訴されるか、というのは実は違います。ここの部分で、実際の運用での調整があります。

*3:損害賠償等が認められる範囲