luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

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著作物の「無断転載」と言っているのですから、引用の話では無いのでしょう。

何か、著作物の無断転載の話が「はてなダイアリー*1」に起きているようですね。
著作物の無断転載を行っている記事に対し削除依頼を行います - はてなブログ開発ブログ から引用します。

このたび、2000件以上のはてなダイアリー記事に対して、楽曲の歌詞が無断転載されているとして、権利者より著作権侵害を理由とする情報削除の要請を受けています。

そのため要請の対象となる記事を投稿されたユーザー様に対してメールにて削除依頼を行うこととなりました。

http://staff.hatenablog.com/entry/2016/01/08/173000

と、あります。


「引用*2」とされる著作物の利用を行っている場合は、わざわざ「無断転載」などとは言いません。もし、実際に「無断転載を行っていない」のに、「無断転載をした」と指摘すれば、相手の名誉を棄損した事になり、その違法性を問われることになりますので、まさか、そんな迂闊な事をするとは思えません*3
ちなみに、事件の被疑者は確定判決が出るまでは、推定無罪であり、有罪とはなりません。これは刑事事件の原則ですが、故に、被疑者を有罪だと決めつけると、被疑者の名誉を明確に毀損している事になります。これも上記と同様の内容ですが、どうもネットのそこここで行われている気がします。実際の冤罪事件の被告が地道に告発している事例は多くはないのですが、あまり褒められた内容でもないように思います。


話が少し、外れました。話を戻します。
...ともあれ、実際に名誉棄損になるような告発をしてくるとは考えにくいので、相手方が「無断転載」と主張している以上、無断転載の事例があり、その告発と、それ故の削除要請がなされるという事ですね。かつ、既に説明したように、冤罪になる事も無い、確定判決を得るような明確な違法行為があるという事なのでしょう。
さて、上記文章には「歌詞の無断転載」とありますから、対象は楽曲の歌詞なのですね。
歌詞という事で、4小節程度であれば、「引用」としてJASRACに手続きをしなくても歌詞や楽譜を雑誌に掲載したりできる | OKBiz より、質疑文章を引用し、何か「微妙に分かり難い」ので解説します。

楽曲を利用する場合は、一部であっても手続きが必要になります。楽曲の部分的な利用と著作権法で定められている「引用」とは別の事柄です。

著作権法上の要件を満たす場合は、自分の著作物に他人の著作物を引用することができます。

https://secure.okbiz.okwave.jp/faq-jasrac/faq/show/233

上記の文章は、何故か質問者が「引用」について質問しているのに、解答が利用についても回答しているので、分かり難くなっている奇妙な文章です。
だから解説が必要になっているのですが、前半部分の「楽曲を利用...」というのは多分、質問者が聞いている「引用」について回答している訳では無くて、「四小節」を受けての事だと思いますが、「一部であっても利用」であれば、手続きが必要と言っているのでしょう。、
まあ、引用では無ければ「利用」と言っても構わないと思いますので、ぞこの部分は妥当なのだと思います。
その一方で、「著作権法上の要件を満たす場合は、自分の著作物に他人の著作物を引用することができます。」とありますので、著作物の引用ならば構わない、と答えている事になります。
前半部分が質問に関係ない「利用」についての話、後半部分が質問にある「引用」についての回答なので、微妙に分かり難くなってますね。


ところで、解答部分が参照として挙げている、「文化庁ホームページの解説資料」には、引用についての定義も記載されています。その条件を満たしていれば、引用となり、著作権者に承諾を得る必要はないとされています。
この引用と言うのは 著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号) の第32条が該当します。ちなみに、法律条文は著作権が存在しないですし、国の広報資料も転載が自由*4なので、全文引用しても構わないのですが、それでは読みにくいので、関連条文を引用します。

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html

さて、正当な範囲内とはどういう内容でしょうか。実際には判例を引くべきだとは思うのですが、さすがにそれは冗長だと思うので、文化庁の文章を転載*5しますね。
著作物が自由に使える場合|文化庁 より。

(注5)引用における注意事項

 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)

http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

つまり、他の著作物を引用する必然性があり、引用部分が明示され、出所の明示がされており、自分の著作物が主となり、引用部分が従となるという事となります。
そういった引用ではなく、無断転載という強い表現で押し切れる著作物の明示が何処かにされている事になりますね。
私も自己記事の何処かで、歌詞の引用はしていた気がしますが、流石に総ての記事の、総ての文章を把握してるわけではありませんし、人間ですので誤りが全くないとも言い切れません。
ただ、文章を観る限り、明確な違法行為と言い切れる「無断転載」という事ですので、もし指摘があるのであれば、明示できるほど明確な内容だと思います。多分、そんな行為はやってないとは思いますが、連絡がある期間はメールチェックをしておきたいと思います。


なお、冒頭の記事の文章ですが、解答方法を限定していたり、解答側ではなく要請側の都合が多いのではないかと思われる文章になっています。
こういった際に、運営側の機微や、器量が問われると思いますので、正当な行為こそ、料簡の広いと思われるような行動で対応して頂きたい*6とは思います。そこの部分で、印象と言うのがかなり違ってくると思います。

*1:何で、ここ限定なのかは理解に苦しむが、権利侵害申し立ての対象がそこに限定されていたと見るのが自然であろう。著作権侵害は未来の運営はともかく、現行では親告罪です。特にコミケ等での著作物の二次使用に関して議論されることが多いようだが、それ故に著作権者によっては著作物の使用に寛容で、その著作物の利用者が、その著作物の文化を盛り立てている場合もあったりしますよね。コミケなどが典型かな。

*2:ちなみに、私は実際の著作物から引用を行っている際には、すぐ上の文章の様態の記載方法で、引用箇所と対象を記載しています。勿論、他の形式で公開されているようなものに関しては違う形式で掲載を行っていますが。

*3:現時点では、公示されていないように見えるため、名誉棄損の構成要件にあたる「公然と」の部分が満たされていないようにも見えます。その点には留意する必要がありますが、「違法性の疑い」等ではなく「違法性を明示している」事は変わりありません。そういう意味でも、強い表現を使っていますね。なお、名誉棄損に関しては右記記事を参照してみてください。詳しいし、正確です。→名誉毀損で訴えるための構成要件や時効の法律相談 - 弁護士ドットコム

*4:32条の後半に記載されています。

*5:32条の2に準ずる行為。

*6:そもそも正当な行為であれば、公に認められる行為でしょう。