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免責同意書は、法的に無効な文書です(留意事項あり)。

本記事は判例タイムズ 1074号に準じています。このため、その際に例示されている免責同意書の内容に準じている事に留意してください。ただし、これ以後も同様の文書を掲示した場合は、法的な無効果は変化が無い事になります。
違う文書での誓約は効果が変わってくることもあり得るので、その際には契約文書の資料を提示して頂ければ、法的機関の裁可を仰ぐこともできると思います。その際には、その旨ご連絡ください。


私は過去、スクーバダイビングを行っていた。今は、高圧化空気での潜水は行っていないものの、いわゆる軽器材でのシュノーケリング等は行っている。
過去、そういった体験の際に、一番気分が良くなかったのは免責同意書についてで、あの文書、法律関係の関わりを持っていると、民法90条の関係で、心の中がざわつくんですね。
トラブル起こしたくないので、署名だけはしてましたが。心の中で「それ無効だよ」と思いつつ。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html より、90条。

第五章 法律行為

    第一節 総則

公序良俗
第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html

要するに「公衆良俗に違反する契約は無効」なんですよ。免責同意書の文面は、まさに全面的に免責に同意する文書なんで、これに該当します。つまりは法的には認められない文書なんですね。
類似の話は、医療行為の誓約書にもあって、誓約書があろうとも医師に過失があれば責任追及されます。判例があり、例えば、「大阪地裁判決、昭和37年9月14日」「大阪高裁判決、昭和40年8月17日*1」などです。


最近では消費者契約法が成立しましたので、こちらの法律が根拠法となったようです。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO061.html より、8条。

第二節 消費者契約の条項の無効

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
第八条  次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一  事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二  事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
三  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項
四  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項
五  消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
2  前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一  当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
二  当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO061.html

もし、免責同意書が判例タイムズ 1074号にあるような分析と同一な文章となっており、「被害者が、被害の請求権を有しない」とか「インストラクター、ガイド等が、『あらゆる』損害賠償責任から免責される」という旨の文章になっているのであれば、消費契約法8条1項1号、同法8条1項3号における「損害賠償責任の全部を免除する条項」となります。
同条文では、そのような条項に関しての無効を記している訳なのですから、その条文に照らして無効となります。なお、消費契約法の他条文や、民法の90条も引き続き有効なのですから、免責を一部免除するような条項についても無効となります。
つまり、免責同意書なる文意を持った契約文書は類似のものも含め、ほぼ無効なのです。判例の例としては、「大阪地裁判決、平成12年12月14日」「東京地裁判決、平成13年6月20日」があります。


私は個人的には、無意味で混乱を起こす*2ので、免責同意書なる文書は取りやめて頂きたいものと思っています。
まだ、やっているのかなあ? なら、止めてほしいものである。 法的に無効な文書を掲示し続ける行為が、どういう風に思われる*3か、よく考えてほしい。

関連リンク
「免責同意書は有効?」弁護士Q&A | Legalus

*1:地裁の控訴審判決

*2:人によっては裁判を起こせないと誤認する可能性がある。そうなったら、公共の利益にならない。

*3:良い印象を持ちませんよね。