luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

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フードファディズム(ゼロリスク思想)に染まると、かえって不健康になる。

最近、いろんなところで、フードファディズムを目にする。かなり、蔓延しているようだ。


気になった発端は『http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10765949913.html』だが、かなり酷い話なので、まずは、そこのリンクを、私のコメントで紹介した、ここから始める。
2011-01-19 - 食品安全情報blog』より。

luckdragon2009 2011/01/20 04:25 > (ワクチンを拒否する典型的な人は、プリウスに乗ってWhole Foodsで買い物をする若い専門職の人で自分は知識があって賢い判断をしていると思っている。とてもよくわかる。

この像については、こちらで同様な指摘がなされています。なかなか、焦点があった指摘です。(指摘されているのは、マクロビですが、ワクチン拒否も同様でしょう。)
> http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10765949913.html
> http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10768051916.html

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110119#p10

実は、『2011-01-19 - 食品安全情報blog』にも出てくるが、「Testbiotech(グリーンピースの関係者が作ったNGO、要するに反GM団体)のプレスリリース」という話もある。*1
ここで私が提示しているリンク先*2については、かなり酷い話があるので、少し後で紹介する事にする。プロパガンダによって偏った見方がされた意見が、どう表現されているか、を考えてみよう。
例えば、『反GM記事。タイトルも煽りなので、省略(興味がある方のみ、リンク先を参照のこと)。』という記事がある。かなり酷い内容、かつ、科学事実がでたらめ*3なので、ここではリンクしか紹介しない。*4
また、『美味しんぼと成分表 - とらねこ日誌』で示された、「美味しんぼ」で、「食品成分表の誤った使用方法により、酷く偏向した意見が導き出されている。」という指摘もある。「美味しんぼ」の論法では、「成分が変化した理由が、農薬が原因かどうかなんかは分からない。」と記事の中で指摘されている*5


実際、自分の主張したい内容によって掲示する情報が変化するのは、メーカーも、それに対峙する環境保護団体や、偏向が強い消費者保護?団体*6も、構造的には同じである。
実際に、メーカーに対して、懐疑的になる方々が、資金がそれよりも潤沢ではない団体が、何もその資金源に対して考察していない、という風に考えるのが、とても疑問である。
一般の消費者が、実際の意見表明に関して、あまり資金関係の考察をしないでいられるのは、会社、組織に属し、そこでの給与をもらっている背景があるからだろう。意見の表明で、その給与に特に問題が起こらなければ、それなりに自由に意見を言う事ができると思う。
しかし、いわゆる自然保護団体を見た時に、その活動が主になればなるほど、その活動以外での金銭供給が難しくなるだろう。すると、当たり前の考察として、何を言えば、団体の協賛者に資金援助をしてもらえるか、という考察が自然に生まれるのではないか?
美味しんぼ」の例で言えば、捕鯨の際に、かなり偏見が入った意見表示ではあったが、その資金援助に関する考察はなかったか? ...とすると、似た思考のバイアスが、何か生まれている可能性も考察しなければ、メーカーへの偏見とバランスが取れない。
私は、自然保護団体や、消費者団体だって、普通に意見上の思考バイアスは生じていると考えるから、そういった確証バイアスが、特定の集団だけには生じていない、と思うのはオカシイと思う。


関連して、WHO の母乳に関する、先日掲載した内容に関連して、『2011-01-17 - 食品安全情報blog』以降の記事を見てみよう。

(1) FSA 見解。(アレルギーに関する知見。←根拠で「アレルギー」と明確に、バイアスを表明している。)

FSAは母乳を与えつつ食物アレルギーの原因となる食品の早期導入がアレルギー削減につながるかどうかについての研究やピーナッツをたくさん食べたり避けたりすることがアレルギーに影響するかどうかの研究などに出資している。これらの研究の成果は我々のウェブサイトで発表されるだろう。

しかしそれまでは、助言は明確である。政府の助言は約6ヶ月までは母乳のみで育てること、6ヶ月になる前にナッツや卵などのアレルゲンとなりやすい食品は与えないこと、である。
(6ヶ月の前にaroundが入っているところがWHOと違う)

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110117#p9


(2) BMJ 上の論文。新規の見解。← WHO は、著者に、ベビーフード会社との利益関係がないか、疑問を呈し、それは否定された。*7

2001年にWHOが発表した助言「母親は赤ちゃんに生後6ヶ月間は母乳のみを与えることを薦める」はその後英国を含む各国政府に採用されてきた。しかしBMJに発表されたレビューでは4ヶ月がいいのではと示唆している。Natureがエビデンスを解説する。

新しい研究の知見は何か?

6ヶ月まで母乳のみだと貧血リスクが高い。また食物アレルギーとセリアック病の発症リスクが高い。しかしこの知見は西洋の観察研究のみであり、途上国に置いては6ヶ月間母乳のみがいいだろう。この知見は4-6ヶ月で固形物を導入すべきことを示唆したEFSAの2009年の助言と同様である。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110117#p11


(3) WHO 再度の発表

WHOは子どもの最大の成長や発育のために、世界中の母親に6ヶ月間母乳のみで育てることを薦める。その後、栄養補助となる食品を与え、母乳は最大2才または2歳過ぎまで続けるべきである。

この件についての最新の系統的レビューはコクランライブラリーの2009年4巻に発表されている。このレビューでは6ヶ月までは母乳のみで他の液体や固体は一切与えないことのほうが3-4ヶ月は母乳のみでその後母乳と食品を混合して与えた場合よりいくつかのメリットがあることが示唆されている。メリットの中には赤ちゃんの消化管感染リスクの低さ、母親の産後の体重減少が早いこと、生理周期の再開の遅さが含まれる。他の感染症やアレルギーのリスクは減らない。6ヶ月までは母乳のみによる成長への有害影響は見られない。ただし一部の先進国で鉄欠乏が観察されている。

WHOは新しい研究知見をフォローし再検討している。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110117#p12


(4) 母乳に関する助言再検討の要請

Daily Mirrorが生後6ヶ月以内に「赤ちゃんには母乳と同様固形の食品も必要」と報道した。BBCは「6ヶ月より前に離乳することが、母乳を与えられている赤ちゃんに役立つかもしれない」と報道した。

これら及び多くの同様のニュースはBMJに発表された研究に基づく。この非公式レビューの著者らは、英国を含む先進国の赤ちゃんにとっては、栄養を十分とるには現在の助言である6ヶ月より前に離乳食を与えられることにメリットがあるかもしれないことを示唆している。彼らは現在の政府の助言、 6ヶ月までは母乳のみを与えること、を再評価すべきであると言う。報告によればきれいな水が手に入らない途上国では6ヶ月まで母乳のみで育てることに明確な根拠がある。

この研究は母乳を与えることに反対しているわけではないことに注意する必要がある。母乳がベストであることには同意しつつ現在の助言より早く固形物を与えるべきだという根拠があることを指摘している。固形物を早期に導入することで鉄欠乏性貧血の発症可能性が減らせる。また現在6ヶ月まで母乳のみで育てている母親が極めて少ないために現行の政府助言が子どもに有害影響を与えていることはありそうにないとも言っている。

保健省は6ヶ月より前に固形食を導入したい場合は専門家に相談すること、2010年9月に栄養に関する科学助言委員会にレビューを依頼すると言っている。

(ミルクを与えている場合は通常鉄が添加されているので関係ない。母乳のみの場合)

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110117#p13

こうやってみると、ちゃんとした主張には、自己のバイアスを明記して行われているし、相互の意見の考察も、自己の意見の正当性の表記、および、その制限範囲にも考慮がある。
また、この事例では、こうやって並べてみると、大きな主張のずれはなく、実際には、どれを選んでも良いのだよ、と判定できると思う。要は『固定概念に凝り固まる事なかれ、ほどほどで良いのです。母乳信仰になる必要はない。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック』で記載したが、それだけでなきゃだめだ、と考えるのがオカシイのである。*8


確かに、メーカーや、各団体が、自分に都合のよい情報を隠す事はある。中国だと炭鉱事故の事例が多いようだ。*9
しかし、そういった内容は、各人がいろいろな方法で、追求と内部告発をしており、実際の健康被害というものが、決して隠せるものではないから、基本的に情報公開はされていると思う。


最後に持ってきたが、そういったフードファディズムの恐怖から、特定の思想に逃避し、マクロビに走った人が、どういう結果になったか、たったの一例に過ぎない事を明示しておくが、私の知っている実例を挙げておこう。『http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10768051916.html』のコメントで記載した、この内容である。

1 ■生命の危機に至った例を知っています。

前のエントリーでは語りませんでしたけど。

私の知っている例では、頑迷に主張を変えずに、死んだ例があります。彼女はやせ衰え、生理が止まり、食事を採る事ができず、点滴になり、歩くことができなくなり、寝たきりになり、...20才に成らずに亡くなりました。

遺伝的には先天的には、まったく病気らしい病気をしなかった彼女は、マクロビをして、初めて病気になり、そして、直接の死因はそれではないにせよ、その延長で亡くなりました。

多分、スタートが成長期にかかっていると、致命傷になる確率は格段に上がります。女性は生理の関係かも知れませんし、ホルモンの関係かも知れませんが、体調悪化の進行が早い傾向があります。
luckdragon2009 2011-01-15 23:37:13

http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10768051916.html

...彼女は、自ら理性を取り戻し、多様な観点から、いろいろと違う考えや、行為を試す事をしませんでした。
フードファディズムに染まり、一つの考え方に固執する事は、こういう悲劇を、時に生む。*10


日本の食文化は、かなり世界に誇りえるものだと、私は思う。その事に背を向け、フードファディズムと、ゼロリスク神話に染まった考えで行動する事は、あまりにも不幸だと、私は思う。
...てげてげで、いこうよ。

*1:いわゆる、プロパガンダは特定の確証バイアスに染まったプレスリリースになるはずなのに、それを引用する際には、それを偏った見方だ、と言及しないのには、酷く不公正なものを感じる。総ての主張には確証バイアスがあり、プロパガンダが強いものは、それが強い。

*2:マクロビに関しての健康被害

*3:例えば、「遺伝子組み換えの成分は他の成分に混ぜた時点で他の遺伝子にも影響を及ぼす」なんて、変な表現があったりする。用語があまりに不正確過ぎて、何を言っているのかが不明だし、多分、書いている本人も説明できないと思われるが、遺伝子は、単純に混ぜて、化学反応が起きたりするものではありません。自己組織内で、酵素分解されない限り、遺伝子としての相互反応は起きませんし、それは生きている細胞の中だし、おまけに細胞の中に入るためには消化される必要があり、その時には遺伝子は、既に遺伝子としての形を成しません。豚肉食べても、人間が豚になったりはしないでしょ。

*4:遺伝子組み換え農産物については、『オズの魔法使いとニセ科学の伝道師はいかに聴衆を震え上がらせた か?~Dr. Oz Showウォッチ3 - 松永和紀blog』にも、記事があります。

*5:季節や品種による成分の違いは、よくある話。なお、私がコメント欄で書いたが、農家が、自家使用分農作物に農薬を使わないのは、単に出荷量を確保するために、お金を使えるかどうか、というのが基本理由でしょう。私は農家の方に、そう聞きました。また、実際に農薬、肥料を使わなかったらどうなるかは、『減農薬・無農薬のコメの味への影響 | 農家こうめのワイン』に、簡単な試算をしてみた、記事があります。味については、なかなか興味深い結果が出たみたいですね。

*6:疑問符をつけたのは、本当に消費者を保護している結果になっているのかが懐疑的だから。時に特定生産者を保護する目的で活動する団体も多い。

*7:こうやって、論文の利益相反は基本的にチェックされている。公式な発表は、こういう風に、陰謀論が入り込む隙間が、実は十分になくされている。

*8:一部に、異様に母乳に拘る集団がいるようだが、状況によるし、理性的に考えれば、必ずしも母乳に拘り過ぎる必要はないと思う。

*9:Twitter / @kaokaokaokao 福島香織: 山東省の元記者で作家の孫浩元の小説「封口費」...』などを参考に。

*10:名前こそ伏せてありますが、これは、私の身近で実際にあった事です。