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案外知られていないのか? 会社法改正と、類似商号の話。

先日、『朝日出版社は朝日新聞出版ではありません - Togetter』にコメントしました。

もしかして、案外知られていないのかも。>同じ商号でさえも、互いに意識(ひどく競合しない状態)しなければ存在できる。

http://togetter.com/li/395285

橋下氏が混同したのは、正しい商号で表記すると「株式会社朝日出版社」と「株式会社朝日新聞出版」ですね*1 *2


過去には類似商号の禁止規定がありましたが、会社法の改正により、それはなくなってます。まあ、両社共に禁止規定があった時の会社ですが、現行法ではさらに規定が緩くなってます。
現行法では、『法務省:商業・法人登記 Q&A』より。

Q  「同じ商号の会社が既に存在すると,登記をすることができないのですか。また,同じ商号の会社が既に存在するかどうかは,どのようにして調べればよいのですか?」
A  既存の他の会社と商号及び本店の所在場所を同一とする内容の設立の登記は,することができません(商業登記法(昭和38年法律第125号)第27条)。例えば,「ホウム株式会社」と「ホウム合資会社」,あるいは「ホウム株式会社」と「株式会社ホウム」は,同一の商号には当たりませんので,上記の制限は受けません。
 同一の商号の他の会社が存在するかどうかは,管轄の法務局に設置されている商号調査端末等によって調査することができます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji69.html#31-2

会社法の施行は、平成18年5月1日ですので、規定廃止はその時からです。その前には同一管轄内での類似商号の禁止規定がありましたが、登記禁止規定はなくなりましたので、最近では、会社登記法上の商号の規定はさらに緩くなっている、と言えます。
なお、意識的な不正を以って他会社と誤認させる行為としての登記は、今でも禁止されていますので、かなり有名な会社とわざと同じような名前を名乗ることは出来ません(下記参照)。しかし、元々設立の際に、自分がこう名乗りたいという理由付けがあり、後日、類似の名前で双方の事業が定着してしまうことは禁止することはできないのですよ。

参考情報『法務省:会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A

Q14 会社を設立する際,類似商号の調査をする必要はないのですか。
 A 会社法の施行日後も,整備法による改正後の商業登記法の規定により同一場所における同一商号の登記は禁止されるので(整備法による改正後の商業登記法第27条),同一本店所在地に同一の商号の会社があるかどうかを調査する必要はあります。なお,会社法施行日後も,引き続き,商号調査簿は登記所において無料で閲覧できるようにする予定です。

Q15 商号や目的は申請書にどう記載するのですか。
 A 会社法では,類似商号の禁止制度が廃止されましたので,商号と本店の所在地とがともに同一でなければ,商号が既存の会社と同一又は類似のものであっても,登記することが可能です。(注1)
 ただし,不正の目的をもって,他の会社と誤認させる商号を使用することは禁止されています(会社法第8条)
 なお,会社の目的が具体的かどうかについては,従来と異なり,登記申請に際して審査はしませんが,記載内容によって,例えば官公庁への届出や取引等において不都合が生ずることもあり得ますので,十分ご注意ください。(注2)
(注1 )この他にも,法令により商号に使用することを禁止されている場合(例えば「銀行」)があります。
(注2 )詳しくは,提出先官公庁等へお問い合わせください。なお,目的について適法性や明確性がないもの(公序良俗に反するもの,記載内容が不明確なもの)などはこれまでと同様に登記することはできません。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji92.html#14


まあ、流石に橋下氏が上記法律改正を知らないとは思わないけど、似た名前の事業内容が違う会社*3は結構存在していまして、規模が小さな、有名ではない会社に至っては、それこそ無数の例があったりします。
冒頭の会社は、有名な新聞社系の出版社*4と、結構硬めの単行本などの出版をしている会社の名前が似ていて、そこの名前を間違えて連呼してしまった故に、ちょっとした風評被害みたいな事例が発生してしまったのですね...。
元々、「朝日」とか「富士」とかいう名称は、日本に古くからある一般的な呼称ですから、この名称を会社の一部に持つ会社名は、それこそ無数にあります。それなので、類似の名前はたくさんある事を意識して、橋下氏は会社名は正確に呼称すべきだったし、まとめ『朝日出版社は朝日新聞出版ではありません - Togetter』にあるように、実際には「了解」と言いつつ何も行動が変わらず、全然「了解」していないじゃんかよ、と問題になっている訳ですが...。


似た名前の会社で全然違う、そして時々間違われて話題になる会社は結構ありますね。三菱の商社とは全然違う系列の『三菱鉛筆株式会社*5とか。


会社には長い名前をつけるわけにはいかないし、やはり有力な名前は重なりがち。人の名前と似たような問題が発生しがちなのです。会社の商号は、その会社に所属する人にとって、生活に密着した大切な名前です。ちゃんと正確に呼称してあげましょう。

私の愛用品
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関連リンク
朝日出版社は朝日新聞出版ではありません - Togetter
会社概要 | 朝日出版社
http://publications.asahi.com/company/info/index.html

法務省:商業・法人登記 Q&A
法務省:会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A

三菱鉛筆株式会社

*1:表記上は、株式会社との間に空白を入れて読みやすくするが、登記上の商号(会社の名前)には空白は入っていない。

*2:それぞれ、『会社概要 | 朝日出版社』『http://publications.asahi.com/company/info/index.html』確認してみてください。

*3:逆に言うと、事業内容が違うからこそ、「不正に似た名前と誤認させる目的」とは考えられないわけで。商標などでも、目的が違えば似た名前でも、すみ分けが出来ます。

*4:そこが雑誌や、他出版物も作っているわけですが。

*5:ここの製品好きです。クルトガは愛用。