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「隠れた前提」の内容が変だ。

隠れた前提、というのは、主張する人にとって当然と考えられている事で、それが省略されている時に、認識に齟齬が生じます。故に、それを明示して、書き直す、という事は大事です。
また、隠れた前提の中には、都合の悪い前提を隠すような場合もあり、その場合、都合の悪い前提を明示する事で、話者の詭弁を明確にする事もあります。


ところで、とある場所に「隠れた前提」の後者の内容の例があったのだが、その例が「事実を正しく記していない故に、隠れた前提を明示する事が、事実を歪めかねない」という内容だったので、詭弁を解説する中で、不適切な例を挙げる事で生じる誤解、なんてのもあるのだろうと思った。
その論理の「隠された前提」を見抜け - 『13歳からの論理ノート』(小野田博一、PHP研究所)感想 - みやきち日記 より。

このタイプの省略の典型例を挙げましょう。

【例】
歩きタバコは不快である。歩きながらタバコを吸うことを禁止すべきだ」

これを省略なしの形にすると、次のようになります。

「歩きながらタバコを吸っている人がいるのは、私には不快だ。私に不快なことは、すべて禁止すべきだ。したがって、歩きながらタバコを吸うことを禁止すべきだ」

このように省略なしにすると、ムチャクチャなことを述べていることが歴然となりますね。

http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20071004/1191464553


...ちょっと待て。


この例を考察した人は、もしかしたら喫煙者だったのかも知れません。もしくは昔はそういう考えをした人が居たのかも知れません。
しかし、煙草が不快なのは「個人が不快」という話では無いでしょう。煙草が不快とされるのは、「健康被害があるから」というのが、一般的なのではないでしょうか。
たばことがん より。

たばこの煙には、本人が吸う「主流煙」と、たばこの先から立ちのぼる「副流煙」とがあります。煙には多くの有害物質が含まれていますが、その量は主流煙よりも副流煙のほうに、数倍から数十倍も多いことがわかっています。

この副流煙を、自分の意思とは無関係に吸い込んでしまうことを「受動喫煙」と呼んでいます。こうした“好まない喫煙”によって病気にかかる危険度は、肺がんでたばこの害を受けない人の1.19倍、心臓病で1.25倍にも高まります。

たばこの健康被害は、決して吸う人だけの問題ではないのです。

http://www.med.or.jp/people/nonsmoking/canser/cont/04.html

こういう内容があるから、「個人が不快と言うよりは、煙草自身に他人に対するはっきりとした害がある。故に、煙草が不快、というよりも、明確に問題視される。」というのが、事実でしょう。
気分の問題では無く、気分も関係していると思われますが、害があるから、社会的に問題視されうるわけです。個人の問題では無く。
これでは、社会的な健康への脅威が、個人の気分問題に矮小化されてしまう。それこそ、詭弁です。


隠れた前提を取り上げ、良い記事を書いていても、例が不適切であれば、誤った事実を明示してしまう、というありがちな話でした。
この記事、このままなのかな?


一応、この例を正しい隠れた前提で書き直すと。


【例】
歩きタバコは不快である。歩きながらタバコを吸うことを禁止すべきだ」
→「歩き煙草は不快である。他人に明確な健康被害をもたらすからだ。故に、歩きながらタバコを吸うことを禁止すべきだ。」


はい。全然、むちゃくちゃでも無ければ、間違っても居ませんね。かなり正当な部類に属する適正な主張でしょう。