luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

社会の治安を維持し、平和な社会を保持する事は、厳罰と厳格な法では出来ない。

何か、時に*1知恵袋にはこういう宝石のようなコメントがあってびっくりする。
少年法が廃止したら大変な事になるってどういう事ですか? - Yahoo!知恵袋 という内容。
例えば、ここ。

いい年した大人なら何ら咎められない行為であっても、未成年者の場合は「補導」されることがありますし、場合によっては家裁の審判にかけられます。明確な違法行為でなくてもこういったことが可能なんです。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12120263867

これは刑法上ではできません。少年法の条文があってこそ、可能です。
少年法 より、

  第一章 総則

(この法律の目的)
第一条  この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

第二章 少年の保護事件

    第一節 通則

(審判に付すべき少年)
第三条  次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一  罪を犯した少年
二  十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三  次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2  家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO168.html

少年法には上記の規定があり、いわゆる刑法上明確な犯罪行為ではない内容であっても、家庭裁判所の審判に付すことが出来ます。ある意味、構成要件の厳密性とは違う世界ではあるんですが、これは刑法ではなく、また罪過として、刑に服すわけでもないからこそ、この内容という事になります。
この内容は、まだ不安定な少年少女たちに対して、今後のために更生を促し、まっとうな大人としての人生をやり直させるための、曖昧な網となっています。
それ故に、運用には非常に注意を要する内容ではありますが。
少年法が廃止され、刑法のみで裁くとしたら、刑法が要求する各刑の内容が強すぎて、軽微な構成要件の罪で逮捕する訳にもいかず、実際の少年法で行われているデリケートな運用は出来なくなるはずです。
また、単純に刑務所に入れるという事では、大人の受刑者と一緒になる事で、その悪影響が発生する事を避けるのが難しい事態になるでしょう。それ以外にも、保護観察にして指導しているが故に、教育として、少年の人生をやり直させている、というのは非常に重要な事だと思います。
安易に少年法を廃止とか言い出す向きは、報道される凶悪事件しか見ていないから、こういう部分での人生の更生という部分を論じません。刑法だけで軽微な事件を扱うのは難しく、そこの部分を忘れているとしか、思えません。

成人なら罰金か執行猶予程度で済んでしまう犯罪であっても、未成年者なら保護観察になったり少年院送致になることもあります。
これは「犯罪の芽」を早い段階で摘み取るためですけど、少年法の規定があるからこそ可能なことです。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12120263867

ここも、実際には執行猶予よりも厳しい状態になる、保護観察に対して正確な事を言っていますね。
刑法上の執行猶予より保護観察の方が、対象者の制約としては厳しく、実際、少年法は刑法より全然緩くない、のですが、少年法の廃止を言う人は、こういう内容には触れませんよね。実際、厳しくはあるが前科という訳ではなく、教育でもあるから、少年の将来には役立ち、かつ、犯罪の芽を摘むことになっている訳で。
こういう運用と、運用の効果を論じずに、犯罪抑止の話をして欲しくない、と思う。
実際の少年以外の犯罪者の更生に対しても、刑務所などの受刑体験よりは、実際に出所した後に、普通に一般人の社会生活がおくれる。また、普通に暮らすことを、周囲社会が許すことが大事なわけで。
ここで前科があることを暴いてみたり、一般社会生活をおくる事を、根拠なく妨害してしまうと、再犯への道が出来てしまう訳で。

「厳罰にしろ!」などという感情だけで突っ走って法改正をしてしまったら、とてもじゃありませんけど社会秩序・治安なんか維持出来ません。
日本よりも刑罰がはるかに厳しいアメリカや中国は、日本よりももの凄く平和で安全な国ですか?

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12120263867

実際、実生活で、普通の人の行動を観察していると、何気に刑法に抵触する行為を行っている場面に出くわします。多分、刑法上の規定に不勉強なせいなんでしょうけど。
そういう事から考えるに、刑法等の厳罰化を行ったら、結構捕まって厳しい罰を受ける人が増えそうに思います。そういう人は、自分が対象になる、と、あまり考えていないようにも見えるし。結構、外見上では普通のサラリーマン風の人も、そういう状態なので、いわゆる反社会的な人だけ、という感じでもないし。
犯罪の厳罰化を感情的に叫ぶ人は、日本が何気に成立させている平和な社会状態について、もう少し多角的に、多視野で考えた方が良いと思う。
最後に、もう一つ読んで欲しいまとめを掲示しておきますね。→ モトケンさん「犯罪者も人間なのよ。犯罪者に人権はないと言ってる人と全く同じく」


私が、普通に観察する人に、犯罪行為の芽が実は存在している、と指摘している部分に着目して、読み、そして考えて欲しい。

*1:稀に、という意味ではあるが。