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判例分析(付記) - 平成25(ネ)752 平成26年4月24日名古屋高裁判決 「認知症者による事故に関する賠償請求事件」

先日 判例分析 - 平成25(ネ)752 平成26年4月24日名古屋高裁判決 「認知症者による事故に関する賠償請求事件」 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック にて、予告した興味深い部分について、判決文を引用して紹介する。
今回引用した部分は、損害賠償額を考察している部分です。


判例紹介 - 平成25(ネ)752 平成26年4月24日名古屋高裁判決 「認知症者による事故に関する賠償請求事件」 (2) - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック より、

しかし,CがH駅においてどのようにして改札口を通過したのか,CがJ駅で下車した後,同駅構内でどのような行動をしたのかなどについては,これを確定するに足りる証拠はないし,また,J駅ホーム先端のフェンス扉は施錠こそされていなかったものの,回転式の取っ手が付いていて閉じられていたものと考えられるから,H駅の駅員がCの入構を阻止できなかったこと,J駅の駅員がCによる同駅構内の線路に立ち入るのを阻止できなかったことをもって過失ということまではできない。そして,H駅及びJ駅の人的・物的設備について,鉄道事業に供する駅として通常備えるべき安全性に欠ける点があったことを認めるに足りる証拠もないから,被控訴人に控訴人ら主張の安全確保義務違反があったものということまではできない。
(2) ところで,上記4(1)に説示したとおり,民法714条により監督義務者等が負う損害賠償責任は,加害行為者としての責任無能力者に対する損害賠償責任を否定することの代償又は補充として,被害者の保護及び救済のために認められたものであり,無過失責任主義的な側面があり,責任無能力者の加害行為によって生じた損害についての代位責任的な面のあるものであることを考慮すると,監督義務者等が,責任無能力者の加害行為について故意又は過失があって,同法709条により損害賠償責任を負う場合と異なり,同法722条2項に定める被害者に過失相殺事由が認められない場合であっても,同項に体現されている不法行為法における損害の公平の分担の精神に基づき,裁判所は,責任無能力者の加害行為の態様,責任無能力者の資力,責任無能力者と監督義務者等との身分的又は社会的な関係(監督義務者等が責任無能力者の推定相続人であるか否かなど),監督義務者等の責任無能力者に対する監督状況などの加害者側の諸事由と,被害者の被った損害の性質・内容・程度と被害者が受けた影響,責任無能力者と被害者との関係などの被害者側の諸事由とを総合的に勘案して,監督義務者等が被害者に対して賠償すべき額を,監督義務者等と被害者との間で損害の公平な分担を図る趣旨の下に,責任無能力者の加害行為によって被害者が被った損害の一部とすることができるものと解するのが相当である。

http://d.hatena.ne.jp/luckdragon2009/20150214/1423858679


まず、鉄道会社には安全確保義務違反を認めていません。しかし、「722条2項に定める被害者に過失相殺事由が認められない場合」であっても、諸事情を総合的に勘案して*1、被害者に対して賠償すべき額を、被害者の損害の一部とすることが出来る*2、と書いてあるのですね。
この理屈に従って、実際には賠償額は半分まで減額されています。
ここの部分、どう理解して良いのかが良く分かりませんが、実際には判決文で賠償額を減じた論旨の核となっています。なかなか、興味深い記述です。

*1:ここの部分、物凄い長文になってます。非常に読みにくい。

*2:つまりは減額できる。