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luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

観てきましたよ、映画「想いのこし」。良い映画でした。

ネタバレしていますので、観てからの方が良いかも。

twitter で見ている人は気がついているかもしれないけど、観ると言ってた「想いのこし」を観てきました。
幽霊になった四人の未練を果たす映画、なんですが、それを描いているうちに、それぞれの人生が語られ、そして、それに触れた主人公の生き方も次第に変わっていく、という、良い映画でした。
それぞれの未練に関わる、生きている方の送る瞬間の対話*1が、結構泣けます。
婚約者は、優しく「死んじゃったら駄目じゃないか」と、語りますし、高校野球の選手たちは、それまでの感謝を語ります。元消防士だった人に、同僚たちは礼を言います。
みんな、それを聞いて、ある人は一瞬で、人によってはゆっくりと、消えて行きます。
話の筋の中で、冒頭では語られていない、生者の方の本音も語られるんですね。父親が亡くなって、母親に育てられている息子は、母親の職業を蔑み、その仕事から解放しようと、懸命に勉強している*2。元消防士の同僚は、寄せられる情報が役に立った事が無いのを、伝えてはいない*3
でも、母親はポールダンサーの仕事を誇りに思っているし、作品の描写を観ていると、衣装こそショービジネス風のものだが、ダンス自身は子供が同じ年代の子供から揶揄されるように「裸で踊っていた」わけではない。
多分、子供は事情を分からぬままに、周囲の同じように事情を分からぬまま、変な事を言っていた、大人の話を真に受けていたのではないか、という気がする。
これは映画でのラストの筋にも関係してくるのだが、実際には子供が思っている程に、揶揄されるような内容でもなく、主人公が体現させ、子供に見せたように、母親が誇るような内容だったのですね。ちなみに、そのシーンは映画の中でも盛り上がる処で、そこにかつての幽霊たち、そして母親が参加して、母親と子供が最後の会話をする機会にもなる*4
主人公は、この出来事で根本的に変わった訳ではない、とは思う。ラストの方で、施設の職員をナンパしたりしているし。ただ、映画の中で、主人公が行動して見せたように、ある程度の持続できる行動力も忍耐もあるようだし、今後もゆっくりと変わっていくのではないかな。孤児になった男の子の様子も、時々は見に行くと思うし...。
ちなみに、元消防士の彼がやっている、道路情報や消火栓の情報を消防署に伝えている内容、同僚が「役に立ったことは無い」と、主人公に伝えているが、あれは伝えた言い方が悪かったか、主人公が早とちりしているか、脚本で脚色のために、実情と変えているか、どれかだと思う。
消防の仕事を知っている人は分かるかもしれませんが、消防署は、道路情報の変更、消火栓の移設、変化の情報は重要で、常に自ら持っている情報を最新のものにしています。そうしないと、実際の移動時、消火栓の使用時に支障をきたします。
描写が軽かったため、どう違っているのか、がうまく指摘できないのですが、あの仕事自体は重要なものなので、前に挙げたように、何らかの事情で、少し変えていますね。もしくは、内容を曖昧にしている、か。
ともあれ、良い映画でしたよ。人が死んだ時に、どんな内容を「想いのこし」するのか*5。そして、それは生者にどんな思いを残しているのか。それを感じたい人は観に行ってみては。

*1:それまでは、幽霊になった死者との直接会話はできない。間接的に、主人公が仲介者となって伝える。故に、それを信じてあげられるか、が、未練を達成できるか、の分岐になる。最初の人は、婚約者だけが信じてくれたし、基本的に直接関わる人しか、その主張を信じてはくれない。ここで相手が信じてくれなかったら、かなり辛い事になっただろうけど、死んだ直後だから、まだ通用したのかな...。

*2:それは語られないので、一見、彼が母親を遠ざけているようにも見える

*3:つまり、元消防士の彼の努力は空回りしている。

*4:広末涼子演じる、子供の母親は、子供が心配で、ずっと残る、と言ってたのに、そこでゆっくりと消えていく。「私は消えないよ」と言いつつ...。

*5:人は誰でも、何時かそうやって、死ぬんです。