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被疑者段階での弁護士活動は、どんなもの? (3) 「不起訴処分にするための行動」

被疑者段階での弁護士活動は、どんなもの? (2) 「起訴便宜主義と、不起訴処分」 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック の続きです。
今回は、実際の弁護士が行う活動について。
この内容については、さすがに刑事事件に関する、弁護士の実務的感覚を参考にするしかありませんので、引用もそこから。
刑事弁護における示談の意味 | 弁護士川浪芳聖の「虎穴に入らず虎子を得る。」 より。

起訴前の刑事弁護においては、いかにして起訴されないようにするかが重要であり、自白事件(被疑者が罪を認めている事件)の刑事弁護はこれに尽きると思います。そして、詐欺や窃盗等の被害者のいる事件では、被害者に謝罪し、被害弁償して示談を成立させて被害届を取り下げてもらうことが重要です。

(中略)

でも、お金をたくさん支払えば示談が成立するという単純なものではなく、被害者の気持ちをできるだけ理解しようとする姿勢が重要だと思います。

http://blog.kohaku-law.com/%E4%BB%95%E4%BA%8B/172/%E5%88%91%E4%BA%8B%E5%BC%81%E8%AD%B7%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%A4%BA%E8%AB%87%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3.html

という事で、被害者に対して示談を持ちかけ、被害届を取り下げてもらう、このことで起訴を防ぐという事ですね*1
ここには出てきていませんが、侮辱罪や名誉棄損罪も、謝罪による相手側の感情消散が必要でしょうね。相手側の感情が収まった事実を提示して、起訴を防ぐという弁護士の戦略に違いはないと思います。
ただ、あまりに酷い行為や、再犯が重なっているようなケースでは示談にすること自体では起訴を免れることはできないように思います。条文も「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないとき」となっている訳で、むやみに起訴を止めるという訳ではないでしょう。


前回も少し述べましたが、「起訴便宜主義」によって、必ずしも起訴されないという事実は妙な陰謀論が主張される余地を残しています。しかし、それは一部の状況を除いては、言い訳になっていると思います。
例えば、実際に被害者への補償や、謝罪、示談の持ちかけが無いのに、起訴された事に対して国策捜査だとか、司法の偏見を述べられる被疑者が時々おられます。しかし、被疑者がちゃんとそういう活動を行っているかどうかは、調べればわかる事*2なので、それが行われていないのであれば、判断がされないのは当然でしょう。
また、実際の行為があまりに酷く、起訴を取り留めたい事態にならないとか、再犯が繰り返されているような場合には、逆に「起訴しない事を避けた方が良い」とも思えます。
あまりに微罪*3なのに起訴するとか、嫌疑が非常に薄いのに起訴に至るとか、そういった明確な瑕疵が無い限り、主張はできないと思います。


という訳で、最近に気になっていた、被疑者の起訴への弁護士の活動戦略について、少し続けて書いてみました。...ひとまず、本日で一連の記事を締めます。

*1:なお、気をつけなくてはならないのは、これは真犯人の場合であり、冤罪の嫌疑の際にはこの戦略とはならないという事です。実際にやっていないのであれば、違法行為を認めてしまう事は出来ず、徹底否認の戦略が取られることになります。まったく別の系列の話なので、今回そちらは取り上げません。

*2:アピールしたいのであれば、裏でこそこそやらずに、そういった情報を公開するでしょう。情報が伝わらなければ、検察官も知ることが出来ないわけで。

*3:なお、その判断を行う指標はあくまで社会的に見て、という部分に注意。自己中心的な思考では、判断を誤ることになります。