luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

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「君に届け(映画版)」で学ぶ、事実錯誤の実態。

元々が多くの派生作品を持つ人気漫画という事なのですが、私自身はあまり多くを観ていないので、物語を映画版に限定しての話です。また、本作品は想いを伝える難しさ、が大きなテーマのようですが、それとつながる話ながら、それにはあまり触れずに、「爽子→貞子」となっていく確証バイアスや、事実錯誤の心理を追ってみたいと思います。

結構人気の作品の様なのですが、私は作品自体にはあまり思い入れが無いせいか、物語の展開がちぐはぐな感じがして、数々のエピソードには気持ちを打たれるものがあったのですが、全体的には高評価とはなりませんでした。
なので、あまり物語の内容には触れずに、「とても典型的な例だなあ。」と思えた、事実誤認の心理について書いてみます。


主人公の女性は、内面の純さを外れて、畏怖のイメージが付与されてしまっている女の子ですね。
そもそも表情の硬さ、笑顔をうまく作れない、という時点で、霊感や呪いの噂を生じてしまっているのが、「外見印象→勝手な内面心理、行為の推定」の事実誤認ですが、結構世の中にはこういう無邪気な偏見でデマを作り、対象者の人生を暗黒に陥れるような事をやっているものです。
これは、「とある物語での登場人物*1に外見が似ていたら、類似の能力を持つ。」みたいな証明されていない仮説ですね。実際には外見が似ていても能力が似る訳ではない*2ので、まずはここで誤りです。
まあ、そんな解説不要の話は良いのですが*3、その後に、教師が噂を否定しようと実験した後のエピソードが見事に「前後即因果の誤謬」でした。
教師が「三秒以上目を合わせたら、呪われる」という噂を実験*4したら、「特になんともなかった」という会話中に苦しみだして、話を聞いていた生徒が噂が実在すると疑念を強めてしまう*5、という...。
「前後即因果の誤謬」というのは、「前後に起きた事象が、必ずしも繋がりのある因果関係を証明しない。」という誤謬*6ですね。
詭弁-△△の後に××が起きたから△△が原因(前後即因果の誤謬) より。

「前後即因果の誤謬」とは、Aが起きてからBが起きたという事実を捉えて、AがBの原因であると早合点する誤りです。

http://ronri2.web.fc2.com/kiben20.html

実際には、「三秒以上目を合わせた→会話中に苦しみだした」ではなく「三秒以上目を合わせた(無関係)→非常に古い痛んだ食べ物を食べた→会話中に苦しみだした」であった訳です。
教師自身が思い当りがあったから良かった*7ですが、これ、思い当りが無かったら、観測中に自分に見えていない観測内容があることに気が付かずに、教師自身も間違った原因推定を言い出しかねないですよね。
これの系で、良く言っているのを見かけて、暇なら突っ込むことにしているのは、「私は晴れ男(女)説」ですね。
あれも無邪気なジョークのつもりなんでしょうが、「私がここに居る(無関係)→気象状況が晴れになる条件を備えた→晴れになった」ですからねえ。言っている人を見かけると、皮肉も込めて「じゃあ、雨で悩んでいる某地方に行ってあげてよ」と言ってみますが、実行した人はいません*8
オカルトめいた説も、ほぼこれで説明できると思いますが、それ以外でも間違った原因を推定してしまいがち。時間的に前後したから因果関係が設立する、なんて安易な推定はしないようにしたいものです。

君に届け - Wikipedia
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*1:そもそも、貞子自身が架空の存在で、実際に起きた内容ではないので、そもそも、ここからして事実誤認が起きているわけですが。

*2:もし、これが正しいのなら、何か能力がある人の顔に、顔面整形でそっくりにしたら、類似の能力を得るか、というと実際には違いますよね。まあ、当たり前ですけど。

*3:そんな変な偏見を発生させているのは、よほど頭の作りがおかしい人だけだと思うので。流石にそんな思考をしている人はあまり居ないでしょう。本当に居たら、病院に行くことをお勧めします。

*4:そんなの普通に否定しろよ、と思ったのですが、まあ、これを言うと作品世界が成立しないので。

*5:もうちょっとまともな考察しろよ、と思ったのですが、多くがそういう生徒だったら、作品世界が崩壊するんでしょうね...。

*6:ニセ医療でもたびたび使われる手法。実際には単純に時間帯が重なっただけでは、因果関係を証明しない。着目していない別の事実が現象を起こしている場合がある。

*7:食べた食べ物を覚えていた。

*8:そんな能力が実際にあれば、各方面で引っ張りだこでしょうから。