luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

IT業界を知らない人のために、コミュニケーション能力について。...言い訳と実態は、違う。

まあ、IT業界とか言っても、アプリケーション開発からホスト管理、インフラ整備まである訳で。また、業態の構造上、独立系と SIer 依存系も違いますので、あまり深いところには突っ込みません。
実際、深いところで、全然実態が違っている事もあり得るのだし、業界をある程度は知る者として、業界への知ったかぶりの態度は止めようと思います。
ただ、一点だけ。この業界を知らない人が、この業界について語られる言葉に勘違いし易いかも...、と思ったのでちょっとだけ書いておきます。
こんなブログもあったりします。→ SEはコミュニケーション能力が大切です。嘘です。: ITコンサルタント 市井賢児のメモ

この業界、何かと「コミュニケーション能力の重要性」が話題になります。
(中略)

なんか言葉自体が一人歩きしてしまっていて、まったく別の粒度と尺度でそれぞれが議論しているものを「SE のコミュニケーション能力」という議題に収束させよう、というスタンスになってしまっている事が事態を複雑にしているように思えます。

http://ichy.seesaa.net/article/4182950.html

よく語られる言葉ですね。私も、かなり食傷気味の、手垢が付いた、かつ、全然解決に寄与していない言葉の議論...。
ぶっちゃけ、私も「どうでも良い」と思っています。かつ、「こういう言葉で語られる事情背景の方を説明しておいたほうが良い」と、思っています。
何で、この言葉にこだわって、議論を収束させようとするのか。...そっちの方を語っておきます。
理由は簡単でして。「業界の構造上の問題や、本人以外の事情で発生している諸事情の解決を、本人の能力に依存して解決させようとし、まさに構造上の問題で不具合*1 *2が生じてしまうため、その原因を、構造上ではなく本人の能力への分析結果として語ろうとした結果、その表現に落ち着いてしまう。」という事です。
短く書くと「本来の構造上の問題点に触れずに、原因への言い訳を言いたいための内容」です。


何か、身も蓋もありません*3が、基本的にそうです。
例えば、違法ですが、多重派遣が横行している現場で、要員へのインタビューがうまく行えず、本当の派遣元と形式上の派遣元との意思疎通がうまくいかずに、現場の要員に不満が溜まりに溜まったら、どうなるか?
まあ、現場から離脱するか、体調不良で休みがちになるか、ですね...。
で、この場合も、本人のコミュニケーション能力は大いに語られ、叩かれもするが、本当の問題点である「多重契約ゆえに伝達ゲームになってしまい、実態が全然本来の派遣元に伝わらない」と、いう点はスルーされます。
また、SIer が無能だったり、基本的に運営管理の主管会社に問題があって、うまく運営できていないプロジェクトで問題が多発していた場合、本来はそこの問題点を分析しなければならないですが、大抵はその方々は権力上、大きな力を有してたりします。
で、そこを分析するのを止めて、各自がその意を汲んで仕事をしてあげなければならないため、奇妙ですが、その点に高度に発達した「コミュニケーション能力」を発揮しなければならず、そこで問題が起きると、本人の「コミュニケーション能力」が問題にされると...。


まあ、ぶっちゃけ、この言葉はマジックワードなので、この言葉が多用される現場や、企業、職場があったら、眉にいっぱいツバをつけて、「運営実態の構造上に、本当の大きな原因が潜んでいないか」を、確認してください。
その結果として、『事情を分析しつつ留まるのか、「危ない」と思って逃げるのか』は、各自が判断してください。


で、一番しちゃあいけないのが、これが業界の当たり前だと思って、「何も考えずに仕事を継続すること」でしょうね。そういう場合、大抵現場が崩壊したり、企業倒産の際に「こんなつもりじゃあなかった」となります。
...転ばぬ先の杖、ディスククラッシュに備えての、バックアップ*4の習慣は忘れずに。

*1:例えば、某銀行のシステムトラブルとか。ちらほら語られていますが、私も一部だけ事情を知っていて、守秘義務もあるのであんまり話せないが、あの原因って基本的に多様な構造上の断絶が生じていて、それを人員の能力で解決しようとしているからですよ。本来の構造上の問題点はあまり手をつけずに。

*2:何で問題点に手をつけないか、ですか? それはいわゆる「大人の事情」です。つまり決裁上、大勢に納得してもらうために、相互の言い分やら、メンツやらを認めてあげなければならないから。まあ、色々相互作用の結果があるので、細かく言いません。

*3:身も蓋もない - 故事ことわざ辞典

*4:「何はともあれ、バックアップ。」というコトワザもあります。