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それは勇気にあらず、蛮勇なり。...的外れの花粉症対応。

花粉症の人が花粉を食べたらどうなるのか? - Togetter』という、まとめがある。
冷静な人には蛮勇*1だと見抜けると思うが、花粉症が酷く思考能力が落ちている状態だと、つい、フラフラと行動が誘導されてしまう人もいるかも知れないので、コメント欄に書いた内容を整理して、記載しておきたいと思います。


アレルギーの体質改善策としての「減感作療法」というものは存在しますし、アレルゲンに対して、それを投与して反応を減らしたり、日常生活に支障が出にくくする療法自体は存在します。
ただし、この療法は「医療機関を受診し、医者が症状を診察しつつ、注意深く投与量を調整する。」という療法になります。まとめにあるような、自分勝手に花粉を採取して、自己判断で自己接種する、という行為ではありません*2
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail885.html』より。

花粉加工食品の多くは、「減感作療法」の効果をうたっています。しかし、これらの食品の宣伝としてうたわれている減感作療法は、実際に医療行為として行われている減感作療法とはその内容が大分異なります。本来、減感作療法は、不測の事態にも対応できるように医師の管理下で行われるものです。

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail885.html

該当のまとめに、私も書いた。

減感(作)療法のこと、言っているのであれば、あれは医者管理でやるものですよ。

http://togetter.com/li/470958

この行為で、花粉症が酷くなる事もあり得るのですから、医者監修でないなら、基本的に止めるべきです。

少なくとも、アナフィラキーショックの可能性ぐらいには、言及しておいて下さい。

http://togetter.com/li/470958

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail885.html』には、さらに詳しく書いてある。

 要点をまとめると、医療行為としての減感作療法は、以下の点がポイントになります。
健康食品の宣伝でうたわれている減感作療法とは大きく異なります。

・減感作療法の専門的なトレーニングを受けた医師が行う。
・主に皮下注射にて行う。
・使用するエキスは、濃度を厳密に調整した標準化製剤を用いる。
・開始前に必ず血液検査や皮内テストで、アレルゲンの検索を行う。
・副作用が生じた際に備え、適切な処置ができる施設で行う。

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail885.html


医療行為として行われる「減感作療法」と、素人が言及したり、特定の食品販売会社が宣伝でうたっていたりする「減感作療法」は、明らかに異なるものなのである。
医者に管理されず、事前の血液検査、皮下パッチテストもされず、投与後の医師の経過観察もされず、副作用の準備も行わず、という行為が「適切な行動である訳がない」でしょう。
それは、明確に「蛮勇」と言うべきであり、「良い子は真似しないでね!!!」なんて言葉で免責されるような行為ではない、のです。


まとめを作成したご本人に届いているのかは不明だし、どちらかと言うと私は、該当のまとめを見た人に届けばよいと思っているので、下記の注意も書いておいた。

ちなみに、この纏めを真に受けた人からの民事訴訟リスクとか、真面目に考察しているのですよね? 念のため聞いておくけど。

ああ、そうだ。どうも真面目に危険性に気付いていないようなので、医学論文をつけておくよ。 【警告】 → 「スギ花粉入りカプセル服用後にアナフィラキシーショックを呈した症例」 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007113642 *3

http://togetter.com/li/470958

素人が勝手に判断して行った感想や、状態の報告を真に受けるのは禁物である。
医師などの訓練された専門家の、論文などを評価するのに慣れた目ではなく、かつ統計的に分析された内容の資料でもないなら、単なる「騒ぎ」程度と考えるべきである。
医師の臨床試験でさえ、医師自身の確証バイアスを結果から除くために、偽薬などを用いた二重盲検試験*4を行うという慎重な姿勢が採られているわけで。


...最後に、それでも希望を捨てたくない、花粉症の方に、良いニュースをお教えしておく。医師が関与しての、「減感作療法」の臨床結果の情報です。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/10/60jaq401.htm』より。

本臨床研究において、最終的に症状が消失または軽減し、効果が認められた症例は、研究終了時まで継続できた症例のうち約70%であった(図1)。
 また、副作用に関しては、鼻や目のかゆみ、舌の違和感、発疹といった軽微なものであり、アナフィラキシーのような重篤なものは一例もなかった。これらの結果から、スギ花粉エキスを用いた舌下減感作療法は有効性、安全性ともに優れた治療法であるといえる。
 (研究者:日本医科大学耳鼻咽喉科学教室准教授 大久保公裕)

http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/10/60jaq401.htm

この臨床試験が、どの段階の臨床試験であるかは不明であるし、多分、副作用や、治療無効患者は出てしまうとは思うので、楽観は出来ないとは思うが、蛮勇と思われる素人療法よりも、確実に治療の可能性は高いはずである。

関連リンク
花粉症の人が花粉を食べたらどうなるのか? - Togetter

スギ花粉を含む食品に関する注意喚起について|厚生労働省
厚生労働省:いわゆる健康食品「パピラ」に係る薬事法上の対応について
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail885.html

CiNii 論文 -  スギ花粉入りカプセル服用後にアナフィラキシーショックを呈した症例

http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/10/60jaq401.htm

*1:勇気と蛮勇は、似ているようで全然違います。冷静に判断した上で、正確な判断の元、人の忌避している行動を行おうとする事が「勇気」。自己を盲信し、客観的な判断力を失ったまま、行動する事を「蛮勇」と言います。

*2:花粉飴がある、とコメントした人もいたが、では『http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail885.html』という注意勧告が出されているのを、どう考えるのか。「2007年2月、スギ花粉加工食品を飲用した女性が、アナフィラキシーショック (死に至ることもある、重篤なアレルギー反応) を起こした問題がありましたが、現状では当該製品のみならず、類似製品が、液体、カプセル剤、錠剤、粉末剤、飴など、様々な形態で多数販売されています。このような製品を安易に使用すると類似した健康被害が発生するおそれがあります。」という記載があるのですよ。

*3:前述の「2007年2月、スギ花粉加工食品を飲用した女性が、アナフィラキシーショック (死に至ることもある、重篤なアレルギー反応) を起こした問題」は、この論文の内容と類似なので、同じ症例のように思われます。

*4:参考 『治験ナビ−治験・医薬用語集<二重盲検法、二重盲検試験>