luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

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戦うために。追い込まれないために、その一。...相手のネガティブキャンペーンに、安易に乗るなかれ。

さて。人は何時でも、戦わなければならない羽目になる時がある。...昨日からの続き。ブラック企業と戦う際に、心得ておくべき点、その一。


相手のネガティブキャンペーンに、安易に乗るなかれ。
...ブラック企業は、自分の言う事を聞かせる際に、本来の業務遂行を成功させるための一般的なアプローチ、「成功への報酬インセンティブ掲示する」を、あまり採りません。
元々、企業で働く労働者は、労働奉仕を行い、見返りに報酬を得るのが通常の労働契約であり、本来の行動です。...ですので、一般的に考えて、この労働意欲を刺激し、対価を大きく得たいのであれば、そのインセンティブ、賃金などの対比する対価を大きく設定することにより、労働内容を改善しようとするのが、本来のやり方でしょう。
小さな報酬ボーナスでも良いでしょうし、本人への評価基準の見直しの機会を多く作るとか、評価基準を増やすとか。
しかし、そういう本来の成功報酬型の労働内容改善を行わないのが、ブラック企業のブラックたる所以です。
ブラック企業は、そういう本来の企業が行うアプローチは採らず、相手へのネガティブ・キャンペーンを行って、「君はこんなに低い評価*1なんだから、がんばらなくては」という、言い方をします。
つまりは対価を上昇させても、使用者側としては何ら支払うこともない。...逆に今までが評価が高すぎた、という事ですね。
しかし、本来の契約において、契約がなされていた場合、通常その状況は、今まで同等の内容に準じて、契約状態が保持されていたと見るのが普通です。それを「不当に高く見積もることにより、今後の履行状況を不安視させ、以降の労働対価を上昇させよう」とするのであれば、それはいわゆる不当な要求ということになります。
ちなみに、裁判にもなった「京都地裁平成23年10月31日判決」より。

被告Bの原告に対する損害賠償責任(争点1)について
(1) 労働者が労働契約上の義務違反によって使用者に損害を与えた場合,労働者は当然に債務不履行による損害賠償責任を負うものではない。すなわち,労働者のミスはもともと企業経営の運営自体に付随,内在化するものであるといえる(報償責任)し,業務命令内容は使用者が決定するものであり,その業務命令の履行に際し発生するであろうミスは,業務命令自体に内在するものとして使用者がリスクを負うべきものであると考えられる(危険責任)
ことなどからすると,使用者は,その事業の性格,規模,施設の状況,労働者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防若しくは損害の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において,労働者に対し損害の賠償をすることができると解される(最判昭和51年7月8日民集30巻7号689頁参照)。
(2) しかるに,本件においては,被告BあるいはCチームの従業員のミスもあり,C社からの不良改善要求に応えることができず,受注が減ったという経過は前記認定のとおりであるが,被告Bにおいてそれについて故意又は重過失があったとは証拠上認められないこと,原告が損害であると主張する売上減少,ノルマ未達などは,ある程度予想できるところであり,報償責任・危険責任の観点から本来的に使用者が負担すべきリスクであると考えられること,原告の主張する損害額は2000万円を超えるものであり,被告Bの受領してきた賃金額に比しあまりにも高額であり,労働者が負担すべきものとは考えがたいことなどからすると,原告が主張するような損害は,結局は取引関係にある企業同士で通常に有り得るトラブルなのであって,それを労働者個人に負担させることは相当ではなく,原告の損害賠償請求は認められないというべきである。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111129185940.pdf

...こんな内容があったりします。これは労働契約の履行に際して、会社側から示された損害賠償ですけどね。
勿論、労働者も信義上の賠償責任を負いますが、それは本人の応分の責任範囲に限定されます。
一般的に、自己の提供する労働対価が賃金対価に対して、一般的に妥当なものであればよく、それに対して過度に大きな対価を要求する事が不当という事ですね。
そうでなくても、労働者は使用者から、労働契約上の圧力を受けがちである。
よって、使用者側の要求がエスカレートした場合、「その要求に対して、過度の提供内容充実を求められていないか」を考え、それに論理的に反駁するのは重要である。
場合によっては、契約更新が問題視されるような理由から、相手の言い分を実態上は認めなけばならなくなる事もありえると思うが、その場合にも、自分の私的メモで良いので、日付つきで、こういう圧力があった、と経緯を記録しておく事は、将来の労働行為において、自分がどうしていくのが妥当か、を考える上で重要かと思う。
また、何時か、労働基準監督署に、こんな事があったのだけど、と相談するための材料として、保存しておくのも良いように思う。
重要なのは、立場が弱くて、なかなか相手の強硬な主張を遮るのが難しい場合でも、自分が不満に思い、希望を曲げて従っている内容があれば、記録しておき、時々、それが妥当か考えておく、という事だ。
戦う、というのは何も相手に明確に声を挙げるだけを言うのではない。
そういった、自己の不満の声を、ちゃんと記録しておく事も、隠れた「戦い」となる。...是非、そういったことを、各自やっていって欲しい。いつか、形にできる日が来ると思う。

参考リンク
京都地裁平成23年10月31日判決

*1:具体的な会話の内容では示唆しませんが、労働契約の下げ評価を匂わしていることもあります。なかなか汚い...。