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インターネットの不法行為の調査費用請求が認められた判例(東京地裁平成24年1月31日判決)

本件は、名誉毀損の民事請求訴訟である。
判例時報平成24年9月1日号(No.2154)、80頁からの記事を参考にしています。
この事案は、個人事業主 SE として勤務していた原告が、業務委託契約を結んでいた被告企業の社員に、不法行為名誉毀損)に基づく書き込みをされた、として損害賠償を求めたものです。
被告*1への請求と共に、被告企業の使用者責任も求めており、被告側は被告本人と、被告企業の双方となっています。なお、何故、使用者責任を求めているかというと、この書き込みがなされたのは、被告の就業時間中*2だったからです。
なお、被告は原告と過去に面識があったようで、現在は職場的な繋がりはなかったようなのですが、そこら辺の動機については判決を見る限りでは何も載っていませんので、不明です。
ただ、判決説明に、侮辱的な表現文章が載っていましたし、原告は、被告の業務委託契約*3ですので、原告が「まさか裁判にするとは...」という意識があったのかも知れません。
ちなみに、本件の書き込みに関して、契約解除の申し入れ等を被告会社が行っており*4、原告はそれ故に弁護士に相談を開始しており、この訴訟を起こしたのも、原告が追い込まれた故の言わば当然の行為*5のように思えます。


この事件で特徴的なのは、被告は「2ちゃんねる」に書き込みを行っているのだが、その調査行為*6を原告が弁護士に依頼して行った際の調査費用、これを損害費用として明確に認めている点です。
インターネット、特に匿名での書き込みに関しては本人情報の特定に手間と費用がかかる場合が多いと思いますが、その費用に関して、これを必要なものであり、請求額に認めるという判断を示しています。
この点で非常に参考となる判決でしょう。


なお、判決では、被告の書き込みは、被告企業の就業時間中ではあったが、被告自身は休暇中だったようで、被告企業の使用者責任については認めていません。
また、今件は控訴されていますので、未だ係争中ということになります。

関連リンク
インターネット掲示板の書込みによる名誉棄損による損害賠償請求で調査費用が損害として認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ*7
判例時報 - 国立国会図書館デジタルコレクション*8
(株)判例時報社|雑誌新聞総かたろぐ掲載 発行社・刊行物

*1:書き込んだ被告企業の社員

*2:「とんでもないな...。」と思ったのですが、これは後に、「状況が違う。」と、判明します。

*3:つまり、原告へ業務を委託する依頼をしている立場。こういう場合、それなりに力関係が発生することは良くある。

*4:それの前段階として、掲示板の記載内容を追求された故に、原告は名誉毀損情報の書き込みの事実を知ったらしい。

*5:自分に身の覚えがない事情で失職の際に立たされたわけですので。

*6:これ、判決の詳細に出てくるのですが、DoCoMo F904i で 7つの書き込みがされた、という情報まで解析していて、その解析内容もなかなか興味深いです。なお、この書き込みは航空機搭乗中にされた、とされています。

*7:同じ判決についての、弁護士の解説。

*8:館内閲覧のみの扱いです。