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柔道必修化に伴って、知っておきたいこと。

昨日、『http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120124-OYT1T00201.htm』の記事を読んでいた。「新年度から中学1、2年の体育で柔道などの武道が必修化される。」としている。
...実は必修化の話は知らなかったので、調べてみた。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/04/20l4s600.htm』より。

平成20年3月の中学校学習指導要領改訂により、中学校保健体育においては、平成24年度から、第3学年になるまでに全ての中学生が武道及びダンスを学習することになりました。

http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/04/20l4s600.htm

武道、およびダンスが必修になるんですね。


冒頭の話に戻るが、武道の中でも柔道について、死亡事故およびそれに類する事故*1が多い、というのは意識に上がっていたので、少し調べてみた。
2010年、つまり改訂があった年の 7月 9日に、「全国柔道事故被害者の会」より『頻発する柔道事故に対しての緊急メッセージ | 全国柔道事故被害者の会』が発せられていたので、そこから引用する。

6月13日に開催したシンポジウムで愛知教育大学の内田良講師が、学校管理下の柔道事故の死傷者数と死亡確立について発表をいたしました。
以下に内田良講師のサイト(学校リスク研究所)より、資料を引用します。*2
表とグラフを参照していただいても、学校活動において柔道が突出して高い死亡率であることがお解りいただけると思います。

http://judojiko.net/news/364.html

...話は、実はここで終わらなかった。続いている。

これだけでも驚くべき数字ですが、柔道の事故の実数はこれよりも多いのです。

6月16日に開かれた全柔連の平成22年度第1回評議会において、「全柔連障害補償・見舞金制度」における事故報告一覧なる報告書が提出されています。
この報告書によると、2009年4月から2010年の5月までの間に、実に8名の死亡者(成人男性2名を含む)と8名の後遺症の残る恐れのある重傷事故が起こっていた事がわかりました。

http://judojiko.net/news/364.html

約 1年間に 8名の死亡者と、後遺症の残る恐れのある重症事故が同数、というのが実数という事らしい。
つまり発表されている数字が若干少なめに出ている可能性*3もある、ということですね...。


その一方で、こんな事実も。

当会の独自の調査で、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリアの柔道協会より直近の10年間で18歳未満の死亡者数は0件である、という報告をもらっています。
日本より3倍も柔道人口の多いフランスにおいても、人口60万人を擁する大都市の緊急病院で柔道による脳損傷の死亡例はないとの連絡をもらっています。

http://judojiko.net/news/364.html

実際の調査結果は『海外の柔道事故による死亡者数調査 | 全国柔道事故被害者の会』で見ることができますね。
日本より柔道人口が多い国で死亡者がゼロなのに、日本ではこの数字。...つまりは、日本では柔道に対する安全対策が、なおざりなんでしょうかね...。
リンク先にも出てきますが、カナダの例では「カナダでは、脳震盪を起こした後、6段階ものステップを踏んでからでないと通常練習には復帰させません。それほど、脳震盪に対して慎重なのです。」という話もあるので、安全対策の手順がきっちりと設定され、それを遵守している。つまりは柔道が危険なことを十二分に認識した上で、柔道講習を行っているわけであり、それ故に死亡事故がほとんどない、という事が言えるのではないか?
実際、日本で同様の事故が起きた際に、どうしてそのような死亡事故が起きたのか、明確に報じている内容が少ないように思います。
日本の伝統的な武道だという点で、何かしら精神的な雰囲気で、心構えとか抽象的な内容に逃げ込んで、明確な事故原因の調査とか、再発防止策の手順確定と、その遵守というものが成されていない、ということはないのだろうか?
指導者自身が、そういう安全対策を策定し、遵守し、死亡者事故を起こさないようにしよう、という気持ちになっていないのが、死亡者事故がなくならない原因になっていないか? ほとんどの指導者はそうは思っていなくても、誰かが「死亡事故はあるものだ(そういうスポーツだ)」と考えているから、なくならないのではないか?
実際、日本以外の国で、フランスのような柔道人口が多い国でさえも死亡事故が皆無だ、ということは、気に留めておいても良いように思う。


必修化、というのであれば、リンク先にある事故原因の分析に関して、下記の提言程度は守り、また、事故原因の共有、分析を行って、死亡事故ゼロを目指して欲しいと思った。

事故を防ぐための緊急提言

無謀な練習はさせないことが大前提ですが、事故をふせぐため、最低限でも以下の事に留意してください。

1.事故は夏までに多い
2.頭を打つ、打たないは関係ありません。頭部の外傷の有無も関係ありません
3.疲労が蓄積した時が危ない
4.脳震盪を起こしたらすぐに練習を中止してください

http://judojiko.net/news/364.html


また、下記提言を受け、安全対策の具体的な設定*4を行って欲しい、と思った。

安全への提言

武道の必須化を前にし、今のままでは安全で安心な柔道が行われるのか非常に不安です。
全国柔道事故被害者の会では、柔道の安全性の確立のために以下のことを提言します。

1.事故の調査・分析・研究と情報の共有
2.徹底した安全対策の確立

http://judojiko.net/news/364.html

昔に、体育で柔道を習ったときには、受身を延々やってからでないと、技の練習とかには移らなかったし、それがちゃんと終わらないと、試合にも移らなかった。そういう点ではかなり厳しかった。
必修化、ということであるのなら、単純に「受身だけの授業」もありだとおもうので、考えてみてはどうだろうか。
個人的には、武道は嫌いではないが、妙に閉鎖的というか、事故があっても実情をなかなか明かさないような秘密主義めいた雰囲気*5は嫌いだ。
武道であるのであれば、正々堂々と、良いことも悪いことも、日の当たるところに出して欲しい。

関連リンク
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120124-OYT1T00201.htm

http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/04/20l4s600.htm

頻発する柔道事故に対しての緊急メッセージ | 全国柔道事故被害者の会
海外の柔道事故による死亡者数調査 | 全国柔道事故被害者の会

学校リスク研究所 −重点課題:学校舎における転落事故−

*1:重大な障害が発生したり、怪我をしたり。

*2:実際のグラフはリンク先をご覧ください。

*3:統計上の計測条件の加減で、数のズレは起きているのだろうか...。

*4:抽象的で曖昧な「心構え」だけでは、事故は防げないと思います。

*5:相撲界が色々指摘されているが、あんな感じ。