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クレーン社事故の判決報道、実際の交通事故統計と対比(危険運転致死傷罪の考察)

考察の足りない部分*1もあるので、少し続けるかもしれません。今日は、ひとまず今日の時点で考察の範囲に上った内容でまとめています。
まだ、ひとまずの考察内容、という点はご留意ください。下記の内容は、調整が入る可能性があります。

色々と議論も発生した、てんかん患者のクレーン車事故の判決が出た。
http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001112200003』や、『http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111219k0000e040154000c.html』の報道があった。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111219k0000e040154000c.html』より。

宇都宮地裁は19日、求刑通り、同罪の法定刑上限である懲役7年を言い渡した。

求刑通りとした宇都宮地裁判決は、現行法の枠内では最も重い。医師の指示に背き大型車を運転し、服薬も怠った柴田被告の悪質さを重視したと言える。だからといって判決を基に、てんかん患者の運転を一律に危険視するのは早計に過ぎる。規制強化のみでは再発防止につながらない。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111219k0000e040154000c.html

彼は医師の指示に背き運転し、かつ、投薬を怠った。実際には疾患が原因というよりも、個人の自己管理に原因が由来する。
判決が法定刑上限というのは妥当と考える。
その上で、記事にもあるように、この事件で浮上した疾病への偏見は捨て去るべきであろう。
そもそも、この事故において、病名を連呼することに意味はあるか?
例えば、睡眠不足でうつらうつらしながら、運転し、同様の事故を起こした場合。彼が言った「発作がおきないと思った」を「居眠り運転にならないと思った」と言い換えた事故*2が普通に存在しないか?
また、眼鏡等が運転免許の条件になっていて、眼鏡をせずに運転して、同様の事故を起こした場合などは、もっと事故への懸念が、本人に認識できる事例*3などではないか?
しかし、眼鏡をつけずに事故に至り、それを原因に、事故を起こしても、そのことを契機として、眼鏡装着者への厳密なチェック*4が喧伝されることはない。
そういった部分に、特定の疾患のみに焦点を合わせているようで、軽く違和感がある。
ちなみに、ここで死亡事故の原因に少しだけ触れておくが、『交通事故の要因−飲酒運転を統計から見てみる | 犯罪心理学的風景』より。

http://kasabake.img.jugem.jp/20070502_315866.gif *5

http://kasabake.img.jugem.jp/20070502_315866.gif

いわゆる、飲酒運転もありますが、「脇見運転」「漫然運転」の死亡事故の方が多かったりします。
まあ、投薬懈怠なので、飲酒運転に並べるのも違和感がありますが、よく言われる飲酒運転でさえ、この状態なので、そういうところに議論の焦点をあわせても、交通事故の減少に寄与しないように思えます。
それから、「危険運転致死傷罪」への言及があったので、この罪の成立要因を調べてみました。

過失致死傷や業務上過失致死傷罪等の過失傷害の罪を規定した刑法第2編第28章ではなく、故意犯たる傷害罪等について規定している同編第27章「傷害の罪」の中に規定が置かれており、法定刑も過失傷害の罪に比べて著しく重く設定されている。これは、本罪は過失犯ではなく故意の危険運転行為を基本犯とする一種の結果的加重犯として規定されている

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B1%E9%99%BA%E9%81%8B%E8%BB%A2%E8%87%B4%E6%AD%BB%E5%82%B7%E7%BD%AA

危険運転致死傷)

第208条の2

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

http://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC208%E6%9D%A1%E3%81%AE2

基本的にこの罪、いわゆる故意犯の概念ですし、実際の法定刑も過失傷害よりも著しく重い、ということから、意図的に投薬を怠り、事故へのスリルを楽しむ、とか、そういう恐ろしい精神状態とかでもない限り、適用しないほうが正しいように思えるんだが。
彼だって、事故を故意に起こすような行動*6をとってたとは考え難いし。
後、この罪を創設したことにより、飲酒運転の事故の場合、ひき逃げや、飲酒の事実の隠ぺい工作とかが出てきたんですよね。

しかし、飲酒(泥酔)運転者が、事故を起こした後に逃走し(ひき逃げ)たために、時間が経過した後での逮捕時点では呼気中のアルコール濃度が事故当時からは変化していたり、又は車を隠した後で更に飲酒をしたり[3]、事故を起こした後に大量の水を飲んで血中アルコール濃度を下げるなど隠蔽工作を図った事例[4]もあり、「逃げ得」と批判される状況も生じている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B1%E9%99%BA%E9%81%8B%E8%BB%A2%E8%87%B4%E6%AD%BB%E5%82%B7%E7%BD%AA

今の現状でさえも、病気への偏見が元で、病名を隠している人が多いのに、既にそういう懸念が起きている罪に対して考察しても、隠蔽が進むだけで、何の意味もないと思いますけどね。
事故を防止したいのなら、そういった情報を公開できる社会環境の整備が必須で、そういうことがない限り、投薬懈怠のチェックを考察する事すらできないと思う。
記事『http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001112200003』で、こう記載されている。

「今後は事故の本質に向けた活動に目を向けていきたい」と話した。危険運転致死罪は適用範囲を飲酒運転などに限定している。その現行法の改正を求め署名活動をしながら賛同者を集めていく考えだ。

http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001112200003

いや、それは現状の惨状*7をもっと荒廃させる意味しかないと思うんですが...。

関連リンク
http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001112200003
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111219k0000e040154000c.html

交通事故の要因−飲酒運転を統計から見てみる | 犯罪心理学的風景

危険運転致死傷罪 - Wikipedia
刑法第208条の2 - Wikibooks

*1:交通死亡事故者数の減少への考察。

*2:意識喪失、という現象まで類似する。

*3:本人の視覚に直接関与しているので、明らかに認識は容易なはず。

*4:そもそも、この取締りは、「てんかん」等の判断より楽であるし、母数もかなり大きいはず。

*5:掲載グラフを引用しています。

*6:そんな事をすれば、簡単に解雇でしょ。そもそも、それを恐れて職場に病歴を公表していなかったわけだし。

*7:自己の疾病隠し。