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時々話題になる、無期懲役刑の仮釈放の実態についての誤解を解消する。

先日、実は法務省の『法務省:無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について』が、更新されていました。
ちなみに、無期懲役刑の仮釈放の実態については、世の中にはどうも誤解があるようで、よく死刑制度の廃止論議などとセットで、「でも無期懲役刑にしても、簡単に出てこられる*1から」というトンデモなデマとして語られることが多いです。
そこで、実態を示すためにも、今日、紹介してみたいと思います。
ちなみに、無期懲役刑というのは、『http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html#1001000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000』より。

(懲役)
第十二条  懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
2  懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。

禁錮
十三条  禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。
2  禁錮は、刑事施設に拘置する。

(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
第十四条  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
2  有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html#1001000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

上記の条文によるもので、有期が期間を定めたものであるに対して、期間を定めないもの*2である。
この無期懲役刑に処する際の、仮釈放に関する法解釈と、その実態に対して、何か誤解があるみたいですね。
ちなみに、仮釈放の条文は、『http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html#1001000000003000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000』より。

(仮釈放)
第二十八条  懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html#1001000000003000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

上記の条文になっているので、ここをそのまま読んで誤解する人や、それ以外でも、「なんか途中で出てこれる人がいるみたい。」という妙な発言に、引きずられたりして、誤解する人がいるようです。
確かに、仮釈放の最短期間は十年ですが、実態としてはそんなに簡単な話ではないようです。


法務省:無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について』に、リンクがあるのですが、『無期刑及び仮釈放制度の概要について』より。

1 無期刑とは

無期刑とは,刑期が終身にわたるもの,すなわち,受刑者が死亡するまでその刑を科するというものです。
つまり,仮釈放が許されなければ,死亡するまで刑務所等の刑事施設で刑の執行を受けるものであり,仮釈放が許されたとしても,一生保護観察に付されるものであって,結局,無期刑を言い渡された者については,恩赦がなされない限り,生涯にわたり国の監督下に置かれることになります。

http://www.moj.go.jp/content/000057317.pdf

まずは待遇の話。要は、仮釈放は「仮釈放」の名前が示すとおり、仮に釈放されるだけに過ぎず、一生保護観察下に置かれています。ここにも書かれていますが、基本は死亡するまで刑の執行を受けるものなんですね。
そして、肝心の仮釈放についてですが、「(2) 仮釈放の判断基準」に書かれていますが、容易な条件とはいえません。
また、「社会の感情」という項目が付けられて分かるとおり、事情を知る人の評価が改められない限り、認められない、ということですので、かなり厳しい条件と言えるでしょう。
なお、実勢の状況を知るには、『無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について』にありますが、

無期刑新仮釈放者の仮釈放時点における平均受刑在所期間は,平成13年に22年8月であったところ,平成17年には27年2月,平成21年には30年2月と長期化しており,平成22年は35年3月となっています。
また,この10年間に刑事施設内で死亡した無期刑受刑者の数は,合計138人であり,仮釈放となった無期刑受刑者の数を上回っています。

http://www.moj.go.jp/content/000081547.pdf

平成13年の22年でも十分長いと思いますが、今に至るに、35年というのが実態です。たとえ、20歳で入所しても出るのは、55歳。
まあ、基本的に一生入っているのと変わりませんよね。
多分、その年月だと、外の世界に違和感を感じてしまう、浦島太郎みたいな状態じゃあないかなあ、と私は思います。


今日は、誤解が結構あるらしい、無期懲役刑の仮釈放について、取り上げてみました。
興味があれば、リンク先の詳しい集計情報なども読んでみてください。

関連リンク
法務省:無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html

無期刑及び仮釈放制度の概要について
無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について

無期懲役刑の仮釈放の実態(法務省): ::::弁護士 川村哲二::::〈覚え書き〉::::
「23年度犯罪白書のあらまし」と「無期懲役刑の仮釈放の実態」(法務省): ::::弁護士 川村哲二::::〈覚え書き〉::::

http://www.geocities.jp/y_20_06/index1.html

*1:後で述べるが、仮釈放の制度があり、この実態が誤解されている。

*2:刑の定義としては無期限。ただし、後述するが「仮釈放」があるため、終身刑ではない。