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片翼の天使。格好良いセフィロスを表現する曲の歌詞が、実は失笑な件。

最初に一言だけ断っておきますけど、曲自体は非常に恰好が良いんですよ。
問題は歌詞です。何で、こんなことをしたのやら。


ラテン語の歌詞がついているのですが、そこが妙に気になって調べ出したんですよ。なんか聞き覚えがあるなあ、と。それも妙に俗な感じだなあ、と。
ラテン語、どうも、こんな感じらしい。

Estuans interius ira vehementi. (二回繰り返す。)
Sephiroth ! ...Sephiroth !
Estuans interius ira vehementi. (二回繰り返す。)
Sephiroth ! ...Sephiroth !
Sors immanis et inanis. (二回繰り返す。)
Estuans interius ira vehementi. (二回繰り返す。)
Sephiroth ! ...Sephiroth !
Veni, veni, venias, ne me mori facias. (四回繰り返す。)
Veni, veni, venias, ne me mori facias. (四回繰り返す。)
(gloriosa, generosa.) (上の歌詞の繰り返しに重ねられる。)
Sephiroth ! ...Sephiroth !

これ、カルミナ・ブラーナの詞*1ですね。
一番最初に気づくのは「Veni, veni, venias, ne me mori facias.」の部分です。ここが非常に特徴的で、この曲を知っている人が最初に気づく可能性が高い部分だと思います。
さて、これがどの部分だというと、「III Cour d’amours (愛の誘い) 20. Veni, veni, venias (おいで、おいで、来ておくれ)」の最初です。訳すと「おいで、おいで、来ておくれ。来てくれなきゃ死んじゃいそうだよ。」となります。
どんな歌詞かと言うと、男性が女性に向かって誘いをかけているのですよね。このパートは「愛の誘い」になっているように、愛の交歓がテーマですから。
そもそも、「カルミナ・ブラーナ」が俗な人々の大衆的な行動を歌ったものであり、総てが運命の女神の手にあって、世は無情なものである、と歌っている訳*2です。
この歌詞の続きは、「...hyrca, hyrca, nazaza, trilirivos!」で、「ヒルケ、ヒルケ、ナツァツァ、トリリポス*3」で、女性の名前とされてますね。


こういう部分を知ると、結構腰砕けになったりして。実際、聴いた時にここが妙な雰囲気を醸し出しているので、違和感を感じ始めた最初の場所でした。
でも、ここだけじゃないんです。
調べたら、「Estuans interius ira vehementi.」は、「II In Taberna (居酒屋にて) 11. Estuans interius (怒りに心収まらず)」のこれも冒頭部分です。居酒屋で若者がくだをまいている歌詞ですね。「胸の中にある怒りを納めることが出来ずに」とでも訳すのでしょうか。ラテン語のニュアンスは良く分からないので、どのくらいの情景を描いているのかは良く分かりませんが、ともあれ居酒屋での「酔いどれ曲」です。
第二部は、愛の交歓のひとつ前の部で、居酒屋を舞台に滑稽さが表現されている部分です。この曲の次曲などは「料理になってしまった白鳥が、その身の哀れさを訴えている曲」ですよ。「12. Olim lacus colueram」という曲です。
最後に重ねられている「gloriosa, generosa.」は、「24. Ave formosissima」から。美神を讃える曲のフレーズの最後の言葉から、一つずつ取られています。「栄光な」「高貴な」という意味です。最初の言葉は、英語で言うと「Gloria」で、これは宗教曲で神の栄光を讃えるような曲の名前にも使われるような言葉ですね。
ここら辺は結構妥当な部分ですが、該当するラテン語を単純に当てれば良いと思うのに、何で「カルミナ・ブラーナ」に拘ったんだろうか。この言葉が出てくるのは、この曲ではここだけなので、わざわざ、ここから引用している*4という事ですよね。
最後に残った「Sors immanis et inanis.」は、かなりまともな部分で、「1. O Fortuna (おお、運命の女神よ)」の途中にある「はかなげなる(et inanis)、恐ろしい運命」というフレーズです。
ここは運命の女神に呼びかけている部分なので、運命の女神自身を指していると思われます。


最初の方で言っていますが、「カルミナ・ブラーナ」自身は、運命の女神によって「回る車輪のように(最初の曲の歌詞)」人生を乱高下させられる人間の無常感を下敷きに、大衆の俗な感情に則して、修道院に残されていたとされる詩編を編纂してできたカンカータ(交声曲)です。
よって、冒頭と最後の運命の女神が歌われている部分を除いては、かなり俗な感情を歌っており、運命の女神以外の部分から抜き出せば、こういう事になってしまうのは自明です。
さらに、今回調べて判明したのですが、総てが「カルミナ・ブラーナ」と一致し、新たな言葉として生成されたフレーズは一か所もありませんでした。要するに、この曲の歌詞は、「カルミナ・ブラーナ」の抜粋から成立している、と言ってもいい事になります。ちょっと、これもどうかと思いますね。
まあ、真面目に考えて、歌詞の使用に際しての許可は普通に取っているとは思いますし、著作権の表示も普通にしているとは思いますが、それにしてももう少し使用する箇所とか配慮したらどうなのか、と思いますね。
(補足追記 私は、オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」を参照していますが、中世の詩歌集「カルミナ・ブラーナ」からとっている可能性もあります。その場合には著作権系の手続きは省略可能なのかも。ただ、その場合にも、意味のちぐはぐさは結局変わりませんけどね。大元から、俗な内容を扱ってますので。)


なお、新作の「再臨 片翼の天使」では、ちゃんとラテン語の歌詞を書きおろしているようです。最初から、なんでそうしなかったんでしょうかね。

*1:後述の補足参照。本記事での「カルミナ・ブラーナ」とは、オルフ作曲のカンタータ(交声曲)の方を指しています。別の可能性として、「カルミナ・ブラーナ」は、中世の詩歌集の場合もあり得ます。

*2:冒頭と最後が、運命の女神の曲になっています。

*3:人によっては別の音を当ててます。ここでは、私が聞き取った音を記しています。

*4:というか、完全に総てが同じ言葉なんで、コピーと言えてしまうかも。だって、新しく付け加えた言葉が一つもありませんから。セフィロス、だけは別ですが、これはキャラ名。