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企業への就業はどの時点から開始され、その後はどういう扱いになるか。

本記事は、企業への就業内定の話です。判例は、新卒、中途採用について存在しますが、それに限らず、本日は一般論を述べたいと思っています*1


過去には、内定取消で日テレを訴えた事件も記憶に新しいですね。ああいう事件が起きるたびに、企業って内定取り消しに関する法律的意味をちゃんと分かっているのか、不安になります。
実際、ざっと「内定取り消し 企業都合 - Google 検索」で検索しただけでも、普通に法律解説が読めるほど一般的な話題だと思うのですが、実際に裁判に訴え出る人が少ない事を見越してか、酷い主張をする人が多いです。
実際、有名な「大日本印刷事件」などは、就業機会を失い、損害が大きくなって声を挙げている訳で、就業活動中であれば支援者が居ない限り、なかなか声も上げにくいでしょうから、そういう事を見越して、立場の弱い人に被害を押し付けているとしたら、酷いと思います。
(6)【採用】採用内定取消|労働政策研究・研修機構(JILPT)から引用。

入社予定日の約2ヵ月前に、突如としてYからXに対し採用内定を取消す旨の通知があり、しかもその理由も示されていなかった。Xは、取消通知のあった時期が遅かったため他の相当な企業への就職は事実上不可能となり、他に就職することもなく、大学を卒業するに至った。
そこで、Xは、Yの採用内定取消は合理的理由を欠き無効である等主張して、従業員としての地位確認等の訴えを提起した。

http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/006.html

実際の裁判は最高裁まで行きました。判例は下記で見ることが出来ます。
昭和52(オ)94 関係確認、貸金支払 昭和54年7月20日 裁判所第二小法廷 判決  いわゆる「大日本印刷事件」
各所検索すれば、弁護士さんの見解も複数読む事は出来ますが、基本的に見解は固まっています。
新卒者でも,中途採用者の場合でも,基本的には状況は変わりません。中途採用者に対する事例としての説明文から引用しますが、基本事項は以下の通りです。
(6)【採用】採用内定取消|労働政策研究・研修機構(JILPT)

採用内定者は、現実には就労していないものの、労働契約に拘束され、他に就職することができない地位に置かれているのであるから、企業が経営の悪化等を理由に採用内定取消をする場合には、いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する法理が適用されるべきであるとした。

http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/006.html

上記類似の状況におかれて、他への就業機会を失ったのであれば、基本的に上記の法理によって説明でき、地位保全ないし、損害賠償請求の対象となる、という事になります。


タイトルの設問への回答形式で答えるのなら、「労働契約の開始(企業への就業)は、内定告知の段階から始まっているのであり、それを取り消すのは解雇と同様の法理になります*2。」という事になります。
労働審判、裁判にもなり得る重大な事項であり、企業側が適切な対応をしないのであれば、コンプライアンス的にも重大な過ちを起こしている事になります。


この事態に適切に対応できるか否か、によって、その企業の健全性、法令順守の姿勢も問われるわけです。

*1:中途採用の取り消し - 『日本の人事部』を読むと、「システムエンジニアでの採用で、御本人に割り当てる予定の派遣先業務が急きょ取り消しになっとことによります。問題はあるかと存じますが、取り消す場合の手順はどのようにすればよいでしょうか。」のような事例も見つかります。この後、質問者が弁護士さんから説明を受けているような内容で、「適切に説明し、地位保全ないし、損害賠償を適切に行ったのか?」は、とても気になります。

*2:安易に出来なくなる