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社会の一員の責を果たす事。私刑に関与せず、賛意も示さない事。

「盗品を返さなかったら顔写真を公開する」 まんだらけの「警告」は問題ないのか? - 弁護士ドットコム に関する話*1です。
まずは、そもそもが脅迫罪が成立する公算*2がありますよね...。実はこっちはあまり主に主張したいことではないので、簡素に言いますが、条文は以下の通りです。

第三十二章 脅迫の罪

(脅迫)
第二百二十二条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html

大雑把に言うと、脅迫罪とは「害悪告知」によって人を脅す事を言います。今回では、名誉に関する害が予測されます。
普段会話を聞いていると、何気に該当する会話をしている人も居るので、結構身近な犯罪行為なんじゃないか、と思います。特に、立場的に高位にある人がやっている場合が多いので、なかなか取り締まられていないのだろうな、と思っています。口頭だと、証拠も残りにくいですからね。


さて。書きたかったのは、そういう犯罪行為に企業が走ってどうこう、という事ではなく、基本的な社会生活の規範の話です。今回の内容では私刑の禁止、私人の他人への捜査めいた行為です。
実はこの行為、一定の理解を示している人も多かったですね。窃盗の行為に関しての捜査上の成果が良くない、と言っている人もいました。
私人が私人を裁く事、刑法にいわれる法益保護を、自己の行為で補完する危険性に関して、人の感受性は、時に鈍い事が確認できました。
実は同じサイトに 万引き客の「顔写真」を店内に貼り出し 「やりすぎ」ではないのか? - 弁護士ドットコム の内容もあって、内容も被るのですが、当然ながら、

「日本では、一般人が勝手に誰かを裁いて、『私刑』を押し付ける事はできません。法律の定める手続きによらなければ、誰も刑罰を受けないと決まっている。つまりは『国家が刑罰権を独占している』のです。

http://www.bengo4.com/topics/474/

...なんですよね。
法的に私刑は禁じられています。
でも、そういう行為への要求は大きいようですね。
某巨大掲示板*3では、何らかの事件があれば、人のプライバシー権などは何の考察もせずに、関連の私人の情報を公開してしまいますし、顔写真とかが出ようものなら、冤罪であろうと、その情報が間違いであろうと、写真の相手を特定したり、何らかの事件の関係とみられている人間の情報を特定し、公開してしまいます。
ここで明確に言っておきたいのですが、社会が私人に関して、社会的な制裁や、勝手な私刑を行って良いという感情があまりにも強く、それ故に、そういった行為も多く起こり、あまりに容認できないと考えています。実際にざっと探しただけで、過去の事件への酷い私刑の情報なんかは、氾濫している、とさえいるのではないか。
そして、そういう行為を行っている人々は、当然ながら正式な公的機関でもなければ、身分証を掲示している訳でもないので、冤罪が起きようが、デマを引き起こそうが、実際に起きた行為に対して、あまりに過剰な攻撃と見られる行為になろうが、まったく責任を取る事はありません。
公的機関が実際の行為に対して、刑事訴訟法や、その他の法律の制約を受け、冤罪に関しては冤罪である旨の追及を受け、時には組織改編や対策が行われ、時には名指しで批判が起こるのとはあまりにも対照的です。


私人が、法的な制約もなく、自分勝手な価値観と、自分勝手な行動規範で、他人を裁こうとすることが、どれだけ危険な行為か、少しでも想像力があれば分かりそうなものなのだが、人は時に、それを理解するには至らないようです。
何故、刑事訴訟法で、実際の捜査行為が制約されているのか、また、実際の事件捜査が法に則していると注意深く確認されているのか、良く考えて頂きたい。それによらない私的制裁や、私的捜査が、どれほど冤罪と害をもたらすのか、良く考えて頂きたい。


それ故、私は先の事件の、私的制裁めいた行為に、強く異を唱えておきたい。
それが横行している社会は、とても危険な社会です。人が法に依らず、法制度にそって裁かれない社会であるから。

*1:どうやら、最終的には写真公開は諦めたようですが。

*2:勿論、司法側で立件し、起訴した場合ですが。

*3:ここに限った話ではないですが、多くはここで起きています。