luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

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熊田梨恵さんの新刊、「胃ろうとシュークリーム」を読み終えて。

この書籍*1には、5+1 の視点が登場します。最後の一つは最初のプロローグからエピローグまで登場する、一人の胃ろう造設者と介護者の視点*2。後の五つについては、在宅介護、胃ろう造設の医療現場*3、研究者、引き受け先(医療)、引き受け先(介護)、となっています。
なお、胃ろう自体は若年層の対処施術や、特定の症例の一時的な栄養摂取の方法としての胃ろうもありますので、記述の中にはそういう「胃ろう」も登場します。
しかし、気を付けていていないと割合的には大きいとは言えないので見落とすかもしれません。実際、報道では高齢者の胃ろうが「胃ろう」として取り上げられることが主だと思いますが、あまりそういうイメージだけを「胃ろう」として捉えてしまうと、色々見落としますので、その点には注意が必要です。


さて。書籍の内容総てを書きだしてしまいますと、書籍を読む意味が無くなってしまいますので、記載はほどほどにしておきますが、各自の視点を取り上げることにより、「胃ろう」が各自の問題点が表面化するような性質を持っている事、それゆえに「胃ろう」だけを問題視すると、非常にマズイ事態に陥ること、が分かります。
例えば、「胃ろう」だけを問題視した結果、『「胃ろう」は嫌だが「経鼻経管」なら良い』なんて妙な主張が生まれてしまい、本来「胃ろう」が最適な場合にも、そう主張されてしまうので、現場で困惑が生まれている現状があったり、「胃ろう」が患者の病状を劇的に改善する症例もあったりするのに、「胃ろう」バッシングで妙な事になってしまったりする現状があったりします。
その一方で、「胃ろう」を造設する患者自身が大きな額の年金をもらっており、そのお金で家族が生活していたり、という問題*4もあったりします。ただし、「胃ろう」を造設される、例えば認知症患者が総て不幸な目に会うか、というと、そんな訳でもないので、判断は慎重にする必要があります。


読後に、ちょっと疑問符が起こる内容もありましたが、最後に出てくる日本老年医学会のガイドラインも含めて、非常に丁寧に取材をしており、その内容が反映されていますので、「胃ろう」にどんな実情があるか、を知るには良い書籍だと感じました。


なお、読後の疑問符については、本稿ではなく、次回で触れたいと思います。

[] *5

*1:初稿では著者名の漢字が間違っていました。申し訳ありません。

*2:シュークリームについては、最後のエピローグで語られます。

*3:特に急性期病院について。後の記載でも出てくるが、胃ろう造設自体は急性期病院に限ってはおらず、介護現場で必要となって造設されることもあります。

*4:「胃ろう」で長く生きている理由が患者自身にないと、造設される患者が非常に不幸な目に合う。

*5:まだ予約中の状態です。