luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

残念ながら、エイプリルフール・ネタではありません。「日本の医療は世界でも誇れるもの」

嘘だ、と言われてしまうのが、この話題の悲しいところで。
残念ながら、嘘ではなく、本当の話。...日本の医療水準は世界でもトップクラスです。でも、何故か、国民の評価が低いのです。
OECDが見る世界の医療 - いーなごや極楽日記』より。

...医療従事者としてはこれをOECDのお墨付きと思いたいのですが、理解しがたいのは、このデータからはアメリカの低所得者が日本に移住しようと思っても不思議はないぐらいなのに、なぜか日本における医療サービスの満足度が際立って低いことです。WHOが世界一うまくいっていると評価した日本の医療制度は、新聞などで利用者にアンケートを取ると不満の嵐で、主要国で最低の満足度しか得られないらしいです。このギャップは一体何が原因でしょう?

 マスコミによる理不尽な医療叩き、という説があります。これはある程度根拠があるようで、マスコミは視聴者の興味を惹くために叩く相手を求めており、叩いても反撃されない公務員や政治家、病院をターゲットに選びがちだと言われます。

http://blog.goo.ne.jp/enagoya/e/80f4491caa52c78b0099f836d343b570

...この話、『まとめよう、あつまろう - Togetter』でも参照先に紹介しましたが、実際、医療叩きは常態化しています。『月の光に照らされて (割り箸事件)無罪で当然ですが、もう遅すぎでしょう』の事件を覚えていますか?*1
救急で運ばれた子供の頭蓋内損傷を、関係者も意識していない「割り箸の残骸が見つかっていない事実」を意識して問診し、発見する、なんてのは前例*2がない限り、見つけ出すのは無茶だと思いますが、刑事事件での起訴までされて、『Amazon CAPTCHA*3』なんて本まで出されてしまったわけで。
この事件、マスコミの攻勢もひどかった。とある番組のコメンテーターは、『みのもんた氏をマスコミから追放せよ!「割りばし死事件」 | ニューロドクター乱夢随想録』で取り上げられているような酷い扱いを。

2008年2月13日の「みのもんたの朝ズバッ!」はその最も悪質な例といえる。民事の第一審で原告の請求が棄却された直後の放送である。

この放送内容については、A医師とその家族が名誉と信用を毀損され、精神的被害を被ったたとして「放送倫理・番組向上機構」(BPO)に申し立てを行い、BPOは2009年10月30日、重大な放送倫理違反があると判断、TBSにしかるべき措置をとるよう勧告した。

http://marugametorao.wordpress.com/2010/05/27/%E3%81%BF%E3%81%AE%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%9F%E6%B0%8F%E3%82%92%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E8%BF%BD%E6%94%BE%E3%81%9B%E3%82%88%EF%BC%81%E3%80%8C%E5%89%B2%E3%82%8A%E3%81%B0/

今、裁判も結審し、かなりの分析がなされている状態では、本件について正しい認識がある程度は形成されていると思われるが、事件が起き、マスコミが医師を酷く叩く状況では、正確な情報を持たぬ一般の大衆は、こんなひどい医療現場がある、と思ってしまうのではないかな。
実際、医療の現場で起きる出来事自体は、難しい話も多く、そういった専門性を持たない人にとっては「マスコミがあまり知識を持たぬままに憶測で記事を書きがちである」という事に想いが至らず、マスコミの論調に乗って、「医者は酷い。医療現場の品質は悪い。」なんて言ってしまうのではないか?
実際、多分、この事件の関係者の中には、裁判結果を不当と考えている人も居ると思う。また、検索すると分かるが、『http://blogs.yahoo.co.jp/paul_smith1969/30107100.html』のような、無茶苦茶な理想論を医療現場に要求する言葉もある。
『「人命を救う」という使命感に燃えた医師がいることが幸いだ』と言っているのだから、この事件の対象医師が悪い、と言いたいのだろう。
しかし、前例の使命感に燃えた医師が、事件の対象医師とほぼ変わらない存在である事に気付かず、そもそも現場の医師が「睡眠時間を削ってまで」なんて状況に置かれている事に、違和感を覚えない、という無慈悲さは、医療崩壊を促進するモンスター患者を連想させて、気分が悪い。
そんな意識に侵され、医師がミスをするたびに、医療現場を叩き、「日本の医療は酷い」と、実際の医療現場の実態を分析せずに愚痴ばかり言っていれば、確かに「日本における医療サービスの満足度が際立って低い」になってしまうでしょうね。
その結果がもたらすものは何か。
今では、ほぼ結果が表れ、ある程度は知られるようになった、緊急医療の崩壊であり、日本の医療現場の崩壊である。現場からの医師の立ち去り、緊急医療からの撤退もある。...無茶な要求は、逃げしか産まないと言う事である。
これを非難する資格は、利用側にあるか?
「ない」と私は思う。
自分が顧客対応で無理を言われ、その要求にこたえる事が「当たり前」なんて言われてみろ。自分がその立場にならないと分からないかもしれないが、多分、逃げたくなるはずだ。それが普通の人間の感覚だと思う。
マスコミも罪深いが、マスコミと一緒に相手を叩く姿を、今一度、鏡に映し、冷静に考えていって欲しいと思う。現実に医療の質の悪化で影響を受けるのは、日本の総ての国民、医療現場で治療を受ける患者たち、なのだから。
私も、医療現場の色々な話を調べだす前、医師に無茶な要求をしていた事もある。多分、無知であることが、マスコミや、色々なニセ情報に騙される原因なのだろう。
世の中には、間違った情報を流して、人の認識を誤らせる人々が居る事も、今はよく知っている。医療情報に関しては、それが多く、医師には敵が多いのかもしれない。
...しかし、それは作られた幻想であって、実際には日本は良き医療を受けられる国である。その事実を知って欲しい。


最後に、日本の医療分析の資料リンクを紹介しておきます。

日本の医療は世界トップレベル「OECDヘルスデータ2010」 | 最近の関連情報・ニュース | 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
http://www.tokyo.med.or.jp/publications/medsystem/01.php
医療・健康コラム - ホスQ


はやぶさも、奇跡であって、あれが常態ではない事にも注意、ですよ...。

*1:事件の分析は『汝の隣人のブログを愛せよ | LOVELOG』を参考に。大体、事件の状況を親が見ていないのに、医療現場の責任にするとは、ヤツ当たりもいいところだと思いますが、そう考えない人もいるようで。

*2:これが前例となった訳ですが。

*3:この書籍は、さすがにアフェリエイト・リンクにはしませんでした。