冤罪、嫌な言葉である。
罪の無い人を、罪に服して良しとする。これは真犯人を罪から逃れさせる、という重大な問題がある故に、一番行ってはいけないことだ。
しかし、痴漢冤罪を筆頭に、今話題となっている、PC遠隔操作事件、足利事件、村木事件。こういう事件はなかなか無くならない。
これらが起きてしまう背景には、多様な原因が潜むので、安易に警察、検察、裁判所の所作を責めて済む訳ではない。例えば、今回の「PC遠隔操作事件」では、自白強要について批判が起きているが、強要せずとも「虚偽自白」は起きる。また自白を全否定してしまうと、証拠品などが少ない刑事事件の解決がまったく出来なくなる、という問題も起こる。
まあ、地位協定の改正を阻んでいて、日本の警察への疑念の大きな割合を占めている、長期拘留による取調べに関しては改善した方が良いと思ってはいるが、これとて、安易に改善に着手して、刑事事件の未解決化を促してしまったら、それも問題となる。
実際、警察自身も事件解決の能力を常に問われているわけで、そのために正しい問題解決能力を備えなければならないのだが、これとて、論点は沢山あり、簡単に問題解決できる話ではない。
それぞれの論点に、トレードオフ、程度の問題があり、それらを調整し、事件の真犯人を捕らえる仕組みを作る。と、同時に適切な裁判を被疑者に行い、推定無罪の思想をちゃんと国民に浸透させる*1という事でもある。
私は、冤罪の発生に関して、加害者への攻撃感情が強く関与していると思う。
痴漢冤罪は、被害者の感情が強い故に、間違った相手を捕縛しても、被害者は「あの人がやったんです」と言いがちであり、そう思いたい、という感情が強い故に起きていると思う*2。
また、足利事件などは、被害者の年齢が小さい故に、加害者を強く非難する論調が生まれ、真犯人で無い人を自白に追い込むという状況になった。...足利事件については、今後、記事を書く予定にしている。
PC遠隔操作事件についても、『http://blog.livedoor.jp/chihhylove/archives/7232267.html』あたりを読めば、警察発表を鵜呑みにし、個人攻撃する社会の側面が見えてくる。こういった感情が警察に無理な捜査をさせている部分も、ちゃんと考える必要がある。
さて、前置きが長くなったが、これらを象徴する話として、多分、起きた事件が大きく誤解されていると同時に、起きた事件の重大性があまり理解されていないようにも思えたので、二冊ほど、光市母子殺人事件の参考文献を挙げておこうかと思う。
単純に、加害者を死刑台に追いやって解決した、と考えたくなかった*3ので。
参考文献
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*1:それには、被疑者が真犯人でなかった際には、かけられた疑惑からの救済を行う、という重大な側面もある。公務員を除く多くの職場は、逮捕時点で安易な解雇を行っているであろう、から。
*2:そもそも、あまりに起きている状況が見えない中で宣言される犯罪行為である。
*3:タイトルにあるので、勘違いする人がいると困るので、念のため。私は、この事件の被害者遺族が私怨を以って、この事件に臨んだ、とまでは考えていない。ただ、こういった事件では、そういった傾向がある、という事を示唆しておきたい。多くの事件で、それは被害者遺族に見られ、それは裁判の場に強い影響を与えていると思う。ちなみに、他の事はともあれ、この事件に於いて「死刑を強く主張した件」だけは、私は強い否定の感情を持っている。