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相手の境遇を、思いやれるということ

昔ばなし。 | 後藤邑子のTSUBUYAKI』を読みました。

東京の病院に治療を引き継いでもらって毎週血液検査を受けました。
業界の飲み会に参加しなかったのも苦手と言うよりは体力温存です。
プライベートでは配送の病人食を食べました。
大好きなお酒は医者がオッケーだと言うので勿論飲みましたが、
睡眠時間も長く取り、週に3日は事務所に休みをもらう。
新人にしては珍しく、且つ、けしからん態度ですが、
持病*1があることを知らせていたので許されました。

http://ameblo.jp/goto-yuko/entry-11298337942.html

こういう事情は、知らされている人には見えていて、何も知らない人には奇異に感じる人もいたのかもしれない。...この人の事は知らないので、現実にどういう感じだったのか、詳細は知りませんが。
実際、私も持病を持っていて、事情を知らない人から変なこと言われたりする。
まあ、そういうときは、そういう人もいるさ、と鷹揚に構えることにしている。
そういう際に、自己のプライベートを明かさない、といきり立つ人もいるけど、明かしても全く理解しない人もいるし、私としてはちゃんと理解し、行動に論理的な対応が現れる人にしか、明かすつもりはない。
勿論、ネットのような、情報の拡散に注意しなければならない所では、まったく明かすつもりはない。


で、本題は、そういう告知の話ではなく、相手の事情を、境遇を理解する、という話。
自分の相手への無理解を、きちんと自己認識しているか、という話。


私のブログを読む人には、時々出てくる話なので、既読感を覚える人もいるかもしれないが、浸透のために、繰り返し書く必要があると思っているし、未読の人*2もいると思うので、書いておこうと思うのだが、大事なことは「相手に対して、簡単に分かったつもりになるな」という事です。
人には、自分から見て、見えていない事情が沢山ある。見えたとしても、本当に理解することが難しい事情が沢山ある。それ故に、私は、相手の状況を解説すること、分かったつもりになること、は極力避けようと思っています。


他人を、簡易に単純化して、即断し、分析し、解説すること*3は、確かに気持ちいいですが、...無意味です。...というより、害毒です。
なぜなら、他人は自分とは違う心、違う境遇を持ち、それぞれの事情に対しても違う判断、行動をするから。
一つとして同じ事情を持つ人はいないし、そこから生まれる判断も、同じではない。...考えてみれば、至極当たり前な話のようにも思うのですけど、結構な数の「自分を普通の感覚を持っていると信じている人」は、何故か、当たり前のように「総ての人が同じ条件で、同じ境遇であるかのように考えて、勝手な分析を押し付けます。」
...そして、こう言います。「とても正確な分析でしょ。妥当な判断でしょ。」


...いや、それ、全然正確な分析*4では、ありませんから。


正確な分析というのは、多種多様な価値判断があり、多種多様な境遇があり、多種多様な状況があると仮定した上で、あくまでも仮説的に推測される判断だが、という留保*5を付けた上で、慎重に述べられるものであって、単眼的な二値論理で、安易に結論付けられるものではない。
でも、チェリーピッキングで、自分に都合の良い結論が出た方が、自分の精神安定には良いから、結構な割合な人がこれ、やってしまうし、慎重な人も、自分の強い感情に捕らわれたりする*6と、やってしまう。


「チェリーピッキング*7」で、「確証バイアス*8」を行うことを防ぐためには、自分が、それを行うかもしれない、と意識的になるしかないように思われる。
「チェリーピッキング」を防止するためには、サンプル例を沢山用意する、とか、サンプルの収集も多様に行う、とか。
ロジカルシンキングを応用して、MECE*9 を試みてみるのも良いかもしれない。
二重盲検*10のような厳密なサンプリングは難しいと思うが、似たような試みとして、まったく別の人に条件は伝えてサンプリングを行ってもらう、という手もある。
確証バイアスを防ぐために、最初に結論を決めるという事をしない、とか、複数の結論・視点を用意して、それぞれに競い合わせてみる、というのも良いと思う。
後、結論を出す際に、自分がその対象に対して、どんな関係であるのか、認識しておくのも良いと思う。
例えば、自分が対象に対して、管理する立場や、反論をされにくい立場だったら、勢い、その結論は自分に都合の良いものになりがちであるから注意すべきであろう。相手が意見を素直に聞いて、納得しているかに見えて、それは「単に従属の姿勢を示しただけに過ぎない」のかもしれない。
「多様な視点を持つ、熟考する人に、評価してもらう」とか、「その分野をあまり知らない人に、業界に毒されない新鮮な意見を貰う」というのも、意見を評価するうえで、必要かもしれない。


何れにせよ、どんな場合でも、「観察や分析は放っておいたら偏るものだ。」と認識しておくのが重要と思われる。肝心なのは、推論が正しい論理の筋道であるか、偏りを排除する努力をしているか、という点。結論の正しさではない。
結論は時には誤る、と思われるが、推論を正しくする習慣さえつけていれば、誤った結論は常に修正されることになる。
常に正しい結論を出すことが重要なのではない。常に正しい推論を行って、できるだけ正しい結論を出すこと*11が重要なのである。


そして、その始点としての『相手*12に対して、簡単に分かったつもりになるな』というのが、一番重要な項目のように思われるのである。

関連リンク
昔ばなし。 | 後藤邑子のTSUBUYAKI
難病情報センター | 特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)
難病情報センター | 全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)
心タンポナーデ

統計の嘘-偏った標本
チェリー・ピッキング - Wikipedia
チェリー・ピッキング、クリーム・スキミング
確証バイアスとは?意味と具体例 都合の良い事実しか見ない心理
MBAの授業 「Managerial Decision Making」その2 Confirmation Bias (確証バイアス)
ロジカルシンキング情報館:ロジカルシンキングの基礎技術「MECE」
IndexPage - 薬学用語解説 - 日本薬学会
治験ナビ−治験・医薬用語集<二重盲検法、二重盲検試験>

*1:この方の持病に関する参考情報。→『難病情報センター | 特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)』『難病情報センター | 全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)』『心タンポナーデ

*2:初期来訪者

*3:短絡思考。単経路思考。モノ・トラック・シンキング。

*4:下手をすれば、分析ですらもなくて、単なる偏見の押し付け、だったりすることもある。極端な場合ですが。

*5:それが成り立つ前提条件

*6:相手を馬鹿にしようとする強い衝動があったり、相手に一言「あなたは甘い」と言いたい衝動があったり、相手に何かのネガティブイメージを持っていて、ネガティブキャンペーンをしたい願望があったりすると。これ以外にも、自分が「単に相手を馬鹿にしたい」とか、「相手を上から目線で怒鳴りつけたい」という気持ちを持ってたりすると。よく「ドヤ顔で俺様論理を押し付ける」とか表現されますが。

*7:参考『統計の嘘-偏った標本』『チェリー・ピッキング - Wikipedia』『チェリー・ピッキング、クリーム・スキミング

*8:参考『確証バイアスとは?意味と具体例 都合の良い事実しか見ない心理』『MBAの授業 「Managerial Decision Making」その2 Confirmation Bias (確証バイアス)

*9:参考『ロジカルシンキング情報館:ロジカルシンキングの基礎技術「MECE」

*10:参考『IndexPage - 薬学用語解説 - 日本薬学会』『治験ナビ−治験・医薬用語集<二重盲検法、二重盲検試験>

*11:時に誤ることを許容し、それを修正することも重要。自分が、必ず正解を出すわけではない、と認識しておくことは、その意味でも重要。

*12:もしくは、その対象事象。