luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

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さて、脳内変換はどこで生じたのでしょうか?

ソースを見ていても、何故か間違って理解する、という不思議な記事『トマトに肥満防止効果発見? 全国でトマトが売り切れる異例の事態にTwitter大騒ぎ!! | ガジェット通信 GetNews』。
あと、関連情報を twitter で伝達している人は「どこをどう読んだ」のかが興味ありますね。


ちなみに、情報源の論文は『Potent PPARα Activator Derived from Tomato Juice, 13-oxo-9,11-Octadecadienoic Acid, Decreases Plasma and Hepatic Triglyceride in Obese Diabetic Mice』です。
ついでに言っておくと、論文には利益相反情報がきっちり書かれていますので、それを表明している著者の意志を差し置いて、情報を伝達するのはかなりの顰蹙ものです。
以下に利益相反情報を。

Young-il Kim1, Shizuka Hirai1, Tsuyoshi Goto1, Chie Ohyane1, Haruya Takahashi1, Taneaki Tsugane2, Chiaki Konishi3, Takashi Fujii3, Shuji Inai3, Yoko Iijima4, Koh Aoki4, Daisuke Shibata4, Nobuyuki Takahashi1, Teruo Kawada1*

1 Laboratory of Molecular Function of Food, Division of Food Science and Biotechnology, Graduate School of Agriculture, Kyoto University, Kyoto, Japan, 2 Chiba Prefectural Agriculture and Forestry Research Center, Chiba, Japan, 3 Nippon Del Monte Corporation, Gunma, Japan, 4 Kazusa DNA Research Institutes, Chiba, Japan

http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0031317

で、ソースとして掲示されている毎日jp にも、『毎日トマトジュースを買っている私はそんな脂肪燃焼効果があることを知らずに飲んでいたのだが、*1』なんてことはどこにも書かれていない*2
http://mainichi.jp/select/science/news/20120210dde041040019000c.html』より。

「13−oxo−ODA」というリノール酸の仲間を発見した。この成分を肥満マウスの餌に0・02〜0・05%混ぜて4週間飼育すると、血糖値が約2割、血中の中性脂肪濃度が約3割減り、脂肪燃焼の指標となる直腸温も0・5度以上、上がっていた。

http://mainichi.jp/select/science/news/20120210dde041040019000c.html

...すみませんが、記事中にはどこにも「人間に効果がある」なんて事は述べられていないのですけど。

河田教授は「有効成分は確認されたが、これだけをサプリのように取るのではなく、トマトなど新鮮な野菜をたくさん食べることが大切」

表現の仕方が微妙なのかも知れないが、ここで言っている「有効成分」とはあくまで、肥満マウスに対する有効成分であって、別に人間のことではない。元々、動物実験は「人間にそのまま適用できない」ことはよく知られている。
教授も誤解されたくないのか、わざわざ「これだけをサプリのように取るのではなく、トマトなど新鮮な野菜をたくさん食べる」って言ってますし...。
おまけに、健康なマウス、つまり肥満マウスではないマウスには効果が認められていない*3し。
まあ、未だにラットの話のままなのですが、元論文でも引用されてますが『Targeted disruption of AdipoR1 and AdipoR2 causes abrogation of adiponectin binding and metabolic actions : Nature Medicine』という研究もありますし、この研究が人間に応用される可能性自体はあるとは思いますけど、その可能性が高いなんてのは、この時点で言えるはずがないと思います。
人間はあまりにも条件が違いすぎますし、対照実験をやるにしても、実験デザインとか考えたら実証は非常に難しいでしょうね。


ま、いつもの如しですが、「期待するのはほどほどに」と言うこと。...脂肪燃焼なら、運動するのが一番早いでしょ。

関連リンク
トマトに肥満防止効果発見? 全国でトマトが売り切れる異例の事態にTwitter大騒ぎ!! | ガジェット通信 GetNews

Potent PPARα Activator Derived from Tomato Juice, 13-oxo-9,11-Octadecadienoic Acid, Decreases Plasma and Hepatic Triglyceride in Obese Diabetic Mice
http://mainichi.jp/select/science/news/20120210dde041040019000c.html
Targeted disruption of AdipoR1 and AdipoR2 causes abrogation of adiponectin binding and metabolic actions : Nature Medicine

*1:cf. 『トマトに肥満防止効果発見? 全国でトマトが売り切れる異例の事態にTwitter大騒ぎ!! | ガジェット通信 GetNews

*2:最初、毎日が誤報を飛ばしたと思ってしまいました。すみません。記事には微妙な表現はありますが、実際には「トマトに、人間に対する脂肪燃焼効果」なんて書いてないですね。読む人が誤解しただけで。タイトルも「トマト:脂肪燃焼効果」で、「人間対象」とは書いてないし。

*3:マウスのインスリン抵抗性の改善ですので、インスリン抵抗性が増している、つまり肥満マウスでないと意味がありません。