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疫学研究 - 「9-11事件の体験者の PTSD リスクについて」

https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/uvmkz1XXqj#』より。

その結果、対象者の95.6%に、災害や事故などの強いストレスを体験した後に生ずる心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関係する症状が一つ以上あった(事件当時の状況が心に甦るフラッシュバック、事件を思い起こさせるものを避ける、不眠など)。

また、対象者の15.0%が、PTSDの疑いと判定された。この判定を受けた割合は、男性より女性で高く、富裕者より貧困者で高かった。

さらに、事件当時の体験とPTSDのリスクとの関係を分析すると、次の5つの体験でリスクが上昇した。

飛行機が衝突した階より上の階にいた
避難が遅れた
ビルの崩壊で生じた粉塵を浴びた
他者の負傷や死亡などの恐怖を目撃した
自分自身がやけどや骨折などの負傷をした

これら5つの体験が一つ増えるごとに、PTSDの疑いと判定されるリスクが2.09倍ずつ高くなった。

https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/uvmkz1XXqj#

...これを見ると、女性で貧困者であると、PTSD の発症にリスクが高い傾向にある、という事になる。


また、下記の五項目を見ると、飛行機が衝突した階より上*1で上昇する、非難が遅れたり、自分が何らかの負傷や、粉塵を浴びるなどの被害をこうむったり、他人の負傷を目撃したりすると、PTSD のリスクが増える、という事が分かる。
自分のいる階については良く分からないが、他の四項目については、自分の恐怖体験を裏打ちする項目要素であるから、非常に納得のいく結果だろう。実体験の衝撃が、後日の不安心理や、フラッシュバックの記憶、心理的なトラウマを引き起こす、という事だ。


なお、この元論文は『Long-term Posttraumatic Stress Symptoms Among 3,271 Civilian Survivors of the September 11, 2001, Terrorist Attacks on the World Trade Center | American Journal of Epidemiology | Oxford Academic』にて読むことができる。英文ですね。


この研究を参考に、東日本大震災PTSD の発症に関して考察してみる。
実際には、飛行機のような飛来物ではなかったが、地震という、不意に起こる災害で、大きな被害をこうむり、同時に、原発の事故も起きている。
また、被災地においては、建築物の崩壊、津波による被害、複合的な災害による人的被害、また、それらの自己被害と、それらを目撃する体験、が起きている。
悲惨な被害についての情報や映像も、各報道機関を通じて、連日報道された。...つまり、他者の負傷や、死亡などの恐怖についても、十分に追体験していると、言える。


これから考察するに、東日本大震災による PTSD は、9-11事件によるもの以上に、被災者ならびに、被災情報の報道のシャワーを浴びた、日本の国民全体に、大きな頻度で起こると思われる。
PTSD については、起きる時期や、起きる内容について、大きな個人差はあると思うし、実際に起きた内容についても、個人の体験に沿った対処が必要かと思うが、何れにせよ、今後の対策が必要な内容と思われる。
東日本大震災の対策は、今後、中長期の計画になっていくと思われるが、この対策についても十分な考察が必要だろう。

*1:つまり、自分の頭上で衝突事件が起きると、心理的にストレスがかかることになるが、これは何が原因しているのだろうか。...また、自分の足元で衝撃が起きたほうが、ストレスが小さいのはなぜだろう。