luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

毎日新聞の自殺報道問題を振り返る、そして、最後の切り札、自己冷静化の手段。

さて、先日の日曜日、緊急の土曜対策ツイートを掲示した事で分かるように、毎日新聞がやってくれた暴挙*1について考えてみる。
多分、記者は自殺が生じた背景を考えてもらうために記事にした、と言うであろう。
遺族が、下記のように語っていればなおさらである。

取材の最後、長男夫婦が記者に言った。「おばあちゃんが自ら命を絶った意味を、しっかりと伝えてください」【神保圭作、井上英介】

http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110709k0000m040149000c.html

だが、この時、記者ならびに遺族に、「その意味を考えさせる行為自体が、他の困窮者に類似行為をさせる可能性が起きる。」という考察はなかったのか?*2
また、その行為は、当の自殺者が望んだ行為だったのか、よく考えてみる必要がある。


WHO の自殺防止ガイドラインは、別に、真の社会的問題を隠蔽するためにある訳ではない。
実際、自殺が起きざるを得なかった生活環境を放置していれば、同じ原因での自殺が起こり得ない、という事を考えれば当然だろう。
ガイドラインは、報道によって不必要な自死が出て欲しくないと願っている。それだから、遺書の公開はするな、自殺の具体的な方法は書くな、と述べているのである。
よく考えてみて欲しい。真に、自殺せざるを得ない背景を説明するのに、遺書を以ってするのは、非常に安易で、直截的ではないか?
記者がそれで給与を得ている、プロの物書きであれば、実際に起きた原因についての、批判、改善要求を行う記事を書く、というのは不可能ではないと思う。...というか、そういう事ができてこそ、プロの物書きなのではないか。
私自身、自身の行為の細かな描写をせずに、過去の自己心理から、自殺予防への提言を書いたのだ*3。分析をし、そういった観点から文章を紡ぐ事が出来さえすれば、遺書を載せる必要はなく、そんな特定の行為だけのために「言論の自由」などと大層な概念を掲げる必要はない、と思う。
遺書を単に載せるのは、単なる短絡、上記の分析を載せない行動から生じた、単なるコピー&ペースト*4しているだけの、思考停止に過ぎないと思う。
記者として、言論の自由の代弁者を自任するのであれば、連鎖自殺を防ぐために、遺書の掲載を見送り、その分析を以って、舌先鋭く対象を批判するのも可能ではないかと思うが、どうだろうか?


マスコミを構成する記者の皆さんは、今後のマスコミの行動の隆盛を考えるのであれば、今ひとたび、その点について深く考えてほしいと思った。


さて、批判はこれくらいにして、精神的に困窮した際、落ち込んでいる際の、私の最後の切り札、を紹介して、一連のコラムを閉じたいと思う。
今までも少しづつ、色々な場所で述べてきたが、私の実行している行為に、論理療法*5がある。実際には、現在の臨床心理学では、「認知行動療法」とされて診療行為にもなっているようなので、あまり細かくは述べない*6が、その基本となっている概念は、自分の感情は自分の認識過程を熟考する事によって、コントロールできる、という考え方である。
自分の感情は、自分自身が感じている状態であるから、自身で、その感じ方をコントロールできるはずだ、という事である。詳細は説明しだすと、それこそ多数の論文、多数の著作を出して、長時間になってしまうので、ここでは端折るが、著作を少し紹介するので、興味がある人は調べてみて欲しい。


...で、ここで肝心なのは、その方法が、自分一人でも可能な事である。今まで述べてきたが、実際の自殺衝動の解決には、身近な友人か、旧知の誰かが必要と書いた。もしくは、相談窓口を利用する方法も考えられるが、なかなか利用が難しい実情があるようだ。
また、友人や、近親者も、時により利用できない事も考えられる。
とすると、最終的な切り札として、自分自身で解決可能な感情処理の方法がある、という事を覚えておいても良いと思う。一つだけ覚えておいて欲しいのは、「自分の感情は、他ならぬ自分が感じている。」という事実である。
他人ではなく、自分が感じている事を、自分が望むとおりに変えることは可能である。それは、困窮した際に思い出すために、覚えておいてほしい*7

参考文献(論理療法)
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*1:と言っても良いだろう。既に朝日は『自殺急増はタレント自殺報道の影響? 内閣府参与報告』のように訂正記事を打っているし、各社も追従で訂正記事を出す可能性がある。

*2:http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~psychiat/WEB_YSPRC/index.files/Page2298.htm』を参照。

*3:連鎖自殺を防ぐ、私の体験談。手を差し伸べ、谷底から引き揚げてくれた人たちの話。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック』『三日間耐えれば、ひとまずは落ち着くよ。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック

*4:単に書き写しているだけだから。

*5:アルバート・エリスの提唱した療法。現在では、認知行動療法に発展している。『論理療法 - Wikipedia』を参照。

*6:実際に、臨床で受けることもできると思われるので。『認知行動療法 - Wikipedia』『psycho lab. : Learn to Psychology! : 臨床心理学 : 認知療法』を参照。

*7:注意すべきは、精神的疾患の場合は、これが当てはまらないので、その場合には医療機関を頼って欲しい。自殺衝動も深刻な場合には、医療機関を使用するのが良いと思う。