luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

元々が煽りで、刑事事件対策の本質を外している気がするのだが、世の人はそう思わないらしい。

私は 知っておこう!烏賀陽弘道の警察や検察(冤罪)から身を守る方法 - Togetter に、かなりの違和感を持っているのです。
だが、どうも「 はてなブックマーク - 知っておこう!烏賀陽弘道の警察や検察(冤罪)から身を守る方法 - Togetter 」あたりを読んでいると、「痴漢を疑われた際の名刺提示デマ」みたいな危険な香りを感じ取れない人がいるようです。
実際、刑事事件の被疑者扱い*1の段階は非常に重要であり、刑事事件の場合にはこの段階で不起訴に持っていくのが重要な弁護活動の課題なので、個々の段階での自分の状況を知っている事は重要な事ですが、これは刑事事件と、刑事訴訟法に関して十分な理解をしている事が必要です。
それは単なる豆知識的な知識の集積では、実は役に立たないと思います*2
私が先のまとめで、

世の中には「刑事訴訟を勉強する本」と言うのもありますので、本当に冤罪を知りたければ、付け焼刃ではなく、司法制度全体の問題点を知る事をお勧めします。
そして、付け焼刃的な知識メモみたいなものは、実際の刑事事件捜査に直面したら、役に立ちません。 どっちかというと、「落ち着いて冷静になれ」くらいしかアドバイスは無い。

http://togetter.com/li/700860

と言っているのは、実はそれを意味しています。
弁護士は逮捕段階でも、そういった内容に関しての十分な理解を得て、活動を行えますが、一般の人は刑事訴訟法に関して、そしてその運用状況について、どれくらいの知識を得ているのでしょうか?


ちなみに、逮捕時の弁護士活動については、先ほど書いたように、39条に記載があります。

第三十九条  身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
○2  前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
○3  検察官、検察事務官又は司法警察職員司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html

実際の被疑者の防御行動は色々あるのですが、実際には知識メモみたいなものではなく、各法令条文の記載内容の理解に準じたものです。
故に、どうも条文の理解が不十分であり、用語の記載が不正確と思える記載を、知識メモとして参考とするのは、非常に危険だとしか思えません。
真面目な話、冤罪について十分に理解し、実際に出会うかどうかは分かりません*3が、冤罪への対策をするのであれば、前述しているように、

悪いことは言わないので、本当に刑事事件の冤罪構造を知りたければ、刑事事件の冤罪事件研究を法律雑誌の特集あたりで読んでください。 ついでに、当番弁護士制度や、起訴前の弁護士活動可能事項も。

http://togetter.com/li/700860

という事です。
判例研究の雑誌や、法学の書籍では、法律研究者が執筆しているので、法律用語の不正確さもなく、実際の足利事件の研究などを読めば、「嘘の自白」がどうやって生じたか、という事について、しっかりと知ることが出来ると思います。
変な知識メモみたいな内容は、実際に自分が被疑者になった時や、捜査で刑事さんと接する時の正しい行動の指針には、あまり役に立たず、変に刑事さんの猜疑心を煽ってしまうように思います。
実際、警察を敵視しても、法的に正しければ警察は逆に味方になると思う*4ので、相手への妙な確証バイアスや、感情的な内容は良くないと思う。
実際、普通の生活の場では、警察にしっかり守ってもらっていませんかね?


なお、前述の 39条ですが、いわゆる私選弁護士ではなく、国選弁護人も可能です。また、被告ではなく被疑者段階でも可能になっています。日本弁護士連合会:国選弁護、被疑者弁護援助、当番弁護士に関する取り組み(日弁連刑事弁護センター・国選弁護本部) より。

被疑者国選弁護制度

2006年9月以前は、被告人のみに国選弁護人が付されていましたが、2006年10月から、被疑者国選弁護制度の第一段階が実施されました。しかし、その対象事件は「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件」に限られていました。その後、2009年5月から実施された第二段階では、対象事件が「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件」に拡大されました。なお、いずれも、被疑者に勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができず、かつ、その被疑者から請求があった場合です。

http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/reforming/kokusen_touban.html

ただ、国選弁護人は資産が無い場合で、私選弁護人は結構お金かかります。とはいえ、国選弁護人は現場の事情などを聞くと呼ばれるまでに時間がかかるようなので、私選弁護人の方が、被疑者の防御行為的には有利なのかな?


実際の刑事事件の事例については、これについて一冊の本が書けてしまう程*5なので、これくらいで止めておきます。ともあれ、実際の刑事事件捜査に関わる場合には、かなりの部分で「冷静な判断」が必要であり、それは知識メモではフォローできないと思います。
刑事訴訟法の理解と、実務の理解が不可欠です。


さて、長々と本題以外の事を書いてしまったが、実は述べたいことは他にあります。
私が実際の事件*6に関わって、刑事さんの訪問を受けたことは既に述べましたが、それについて実は言いたいことがあります。
実際に刑事さんが、その事例について若干言及してくれたのですが、どうも事件当時に、私が付近で目撃されたことについて、なかなか詳細な事を述べてくれた方が居るらしい。実際には、私はその事件には無関係であったのですけどね。
世の中、実際には事件が起きると、自分が不満を持っている人間が犯人じゃないか、と、まるで事件に関わりがあるかのような目撃談を言い出す人が居ます。これは、実際の刑事さんなどが述べていたりします。また、110番通報でも、結構、そういう話題が出ます。
実在の事件でも、犯人ともくされた目撃談が、嘘っぱちだったとか、妙な確信めいた発言だったが、全然違っていた、という話が多々出ます。また、犯人逮捕までに時間がかかると、捜査の慎重さを讃えるのではなく、警察の捜査能力を疑うような話題が出たりします。


私は、実際の冤罪には、こういう社会の風潮が、それなりに背景にあると思う。
警察だって、あまりに性急な捜査活動が求められれば、それなりに圧力に感じるでしょうし、証言にそういった内容が混じれば、やはり過ちを犯しがちになると思う。
実際、事件被害者の談話などを聞くと、真犯人かどうかとういうより、犯人に見えそうな誰かを処罰したいみたいな話が多く出てきて、非常に閉口することがある。真に憎むべきは真犯人だろう? と愚痴の一つも言いそうになる。
これは刑事事件ではないが、一般の社会の諍いや、事件めいた内容になってくると、やたらと軽率な思い込みの発言や、誰かを犯人に仕立て上げたい安直な発言が多数発生するのも、かなり不満に思っている。こういう内容は、刑事事件の様な重要な事例でも、それなりに頭をもたげている筈です。


私自身は、こういった妙に感情的で、何かをバッシングして、それを原因にしていれば良い、みたいな風潮に危惧を覚えるのだ。
先のまとめの、警察に対するイメージも、その内容が色濃く表れていて、非常に不快に思えた。実際の警察の人は、そこまで愚かではありませんよ。日常的に接していないと、なかなか分からないかもしれません*7が...。


なお、ちょっと話題に出したが、刑事訴訟法への参考書籍を見つけたので、紹介しておく。まあ、普通に読み物として読めるとは思う。
[]

*1:起訴前の捜査段階での扱い。ちなみに、この段階でも弁護士は付けることが可能です。特に身体拘束つまりは逮捕された場合には刑事訴訟法39条により、弁護士を付けることが出来ます。

*2:例えば、刑事事件を不起訴に持っていく事は重要な弁護活動です。 が、一般の人はどのくらい、その戦略を練れますか? そういう部分は単純な知識メモではフォローできない内容ですよ。刑事訴訟法と、その実務を十分に知っている必要があるので。ここで必要とされるのは、実務の知識です。たんなる法律条文ではなく。

*3:私の体験も十分にレアであり、一般の人は実際の事件捜査にはなかなか出会えないと思います。なお、私は逮捕拘留された訳ではなく、自宅で刑事さんの訪問を受けただけです。多分、捜査のローラーをかけられた段階で、被疑者ではないとリストから外されたのでしょうね。刑事さんが私の話を聞いた段階で。  ちなみに、刑事さんは、しっかりメモ取ってましたけど。供述調書ではないです。  なお、既に述べていますが、どうも事件があった現場の近くで、私が目撃されたという通報があったらしい。刑事さんが私を訪問したのは。刑事さんが、そういう事を言ってました。

*4:実際、警察は法的に正しい事を主張した場合には、ちゃんと聞いてくれますよ。勿論、感情的ではなく冷静に相手に告げる必要はありますが...。

*5:実際にそういう書籍があります。例えば「小説で読む刑事訴訟法」とか。

*6:実は、ニュースにもなりました。結構大きな事件です。実際に犯人が逮捕されたかは、調べていないので不明。

*7:勿論、暴力装置的な行動も有る事は有る、のですが...。