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ヒューマンエラーの考察 〜現場力は経験知〜

土曜日から連続してコメントしていたので、本日の記事は Yosyanさんのブログの主要な自己コメント掲載です。
しかし、こういうのを報道する際には、もう少し、事故の起きた背景事情に考慮して報道して頂きたいものですね。
2010-06-19

luckdragon2009 2010/06/19 13:06
あ。意味分かりました。

一回、もう少し議論進んだ後で、数式を修正しつつ、提案があれば、あげる事にします。
数式自体は、今のところは、そのままにしておきます。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/19 18:09
何か、数式の話にはなりませんが。

有名なシステム工学の本に、「[人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))]」という本があって、これは工数の話で、人月と書いてあっても、人と月は実は置きかえ出来ない、という話です。

人を増やすと、互いのコミュニケーションに時間がかかるようになるので、逆に遅れる事もある。...ダブルチェックしたら、同じ事起きますね。トリプルなんてやったら、複合エラーの温床でしょう。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/19 18:13
それ以外には、タイトルが示すように、一挙解決の方法なんてないよ、って本でもあるのですが...。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/19 18:18
システム工学は、泥臭く、妥協点の学問でもあります。
この場合、どこまでの精度(問題の発生率)を考察するか、という事だと思いますが。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/19 19:59
薬だと、いっぺんに飲んでも致死量にならんように分けておく、とか、指示量で禁忌になるケース条件を上限値として、セーフティネットのDBとしてセットしておくとかできそうな気もしますけどね。

単純にアラートとして出して、確認求めるくらいなら、対応可能な気がしますが。

それとも、禁忌なケースって、人間の思考をトレースすると起きる、思考フレーム爆発フレーム問題(条件式が爆発的に増え、コンピュータで扱えなくなる。ヒューリスティック解決法が単純にコンピュータ化できない基本原因)が起きるんでしょうか?

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/19 20:19
あとは、指示数値の単位と、ポンプの数値の桁位置があってないのも問題ですけど、これは違う形式のが混在していると悩ましいですね。

病院の規模だと、違う装置の混在は一般的にありそうですね。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/20 02:58
まあ、主張は分かりますし、言うとも思っていました。 > 卵の名無し さん
要求されているのが、ゼロリスク神話(100%を要求されているという論点から。実際の運用はフォアナイン[99.99%]や、ファイブナイン[99.999%]のような気もしますが。人間も、無限の努力はできないので。)であるというのも理解しています。

航空機など、運用者がかなりの安全性を考察されうるものである場合は、常にセカンドプランを掲示し、副パイロットを常に用意して事にあたる内容(これもシステム工学です)、また昨今では崩れつつありますが、安全神話が守られている存在としては新幹線も、多分、整備と運用、運転手をシステム工学上の考察で設計しているでしょう。

ただし、コアの部分に注目すると、航空機ではパイロット(自動操縦や、ILS もあるが)、新幹線の場合は運転手と各種安全管理装置(列車相互管理システム、各列車の速度、位置を確認し、相互の安全性を、運転手を補完する事で成り立たせるシステム)が行っている、という違いはあれ、最終的には操縦者が人間力で安全管理しているのですね。
パイロットが非常に長時間の練習と経験で成立しているのは、その意味で、十分にヒューリスティック(複雑化する状況の管理を、人間の認知で行っていると言う意味で)な解決方法です。

前コメントの解決方法で、少しだけ触れましたが、ヒューリスティックな解決方法を、コンピュータでやろうとすると、フレーム爆発問題フレーム問題が起きます。コンピュータ化しようとして、論理を洗い出すと、論理条件式が爆発的に増え、論理構築が困難になる、認知工学上、情報工学上の概念です。
多分、薬の禁忌条件は、ある程度までは DB化可能でしょう(高血圧のアダラート舌下が禁忌と判明したように、文章の形ではあるが DBに存在している)。ですが、その内容を運用管理するとなると、条件が一挙に複雑化します。

点滴速度の設定には、少数点が設定できるもの、できないもの、非常にアナログなモノ、また Yosyanさんが挙げられたように、まるで追加の患者のように、非常に複雑な管理を追加してしまうようなもの、いろいろなものが存在しているわけです。
また、卵の名無し さん が挙げらているように、実際の患者の状況、治療の内容、方針、果ては患者家族の意思まで、実際には考慮する必要があるわけですから(ここでパイロットの役割を果たしているのはドクターですね)、まさにヒューリステックな解決を、人間力で行っているわけであり、前に挙げたように、ここでフレーム爆発問題フレーム問題が起きます。
輸液ポンプの設計程度しか、システム工学は応用できない、というのも、実はちょっと違う(ヒューリスティックな考察も、システム工学の一端ではあるので)のですが、実際の運用を考察すると、それ故に結局、人に頼った安全管理の設計となり、最終的な現場の判断に至る視点まで降りると、システム工学が退場するのは同様です(癌センター等の安全管理委員会が、どういう議論を行っているかは、参考に、聞いてみたいと思いますが。)。

ちなみに、ダブルチェックの論点で、少しだけ触れましたが、人間力を人数で重ねると、そういう解決法になります。ただし、人間を増やすと相互の人数のノードの相互関係になるので、二人だとまだ良いのですが、三人以上から相互関係が一挙に増えます。複合エラーが起きやすくなるのも、人的リソースを消費する形になってしまうのも、前述した通りです。それでなくとも、装置が単数の種類ではないのですから、さらなる複雑化は、あまり賢明とはならないんでしょうね。

ちなみに、法曹関係者も、医療者も、たしかブログ上で言及していたかと思いますが、厳罰化は事故を防ぐ手立てにはならない、というのは、「[ヒューマンエラーは裁けるか―安全で公正な文化を築くには]」の書籍を紹介していたところで、述べられていた内容でしたね。("http://d.hatena.ne.jp /yjochi/20100112#1263258873" とか "http://d.hatena.ne.jp/DrPooh/20100301/1267423820" あたり。)

ところで、本件だけに限って言えば、対象の看護師は若いです。多分、経験も浅く、実際の指示および現状が変だと気付きにくい。(ふつうに考えると変、というのは経験が生むもの)
指示の伝達経路が不明ですが、最初の個人担当(経験未熟な場合、多分ベテランが見守ると推測されます)か、それに類似する状況だったと考えられます。
慣らしから本運転に持っていくタイミングって、事故が起こりやすいタイミングです。後認知バイアスになっちゃいますが、ここで、何か考えなければならなかったんでしょうね。(設定指示と、実際設定の、桁設定が相違しているのも要因でしょう。)

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

luckdragon2009 2010/06/20 03:07
あげている書籍のブログ見て、気がつきましたが、人間、財産、という違いはあれ、これ、東証の誤発注入力設定と同根ですね。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c


参考書籍
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関連リンク

2010-06-19
点滴速度設定ミスで看護師を書類送検…、個人を罰するだけでは再発防止にはなりませんが… ( 生活習慣病 ) - うろうろドクター - Yahoo!ブログ
ヒューマンエラーは裁けるか - Dr.Poohの日記
2010-01-12

自ブログでの補足

さて、コメントに、自ブログで補足する事にした。

この件でもそうだが、少し医療関係の情報に、この視点が欠けているように思えたからだ。下に参考書籍があるが、言葉に関する「引き寄せ」「巻き込み」に関する考察が薄くないだろうか。無造作にネガティブな言葉を使うと、ネガティブな方へ意識を引っ張られてしまう。表現をポジティブにする事で、行動を「論理的に前向きにする」ことができるように思う。タイトルはちょっと変だが、内容は論理的に行動できる内容なのではないかと思う。ただし、まだ未読のため、他の書評も参考にして欲しい。*1
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追記
2010-06-19

luckdragon2009 2010/06/20 14:41
航空機の、パイロット、副パイロットのシステムは、実際には食事、睡眠などを必ず別パターンにします(同じ方法では、そこで問題が発生した場合、双方に影響するので)ので、高コストなシステムであり、この方式は医療には使えません。
(こっちの方式は、航空機特有のものであり、一人が大勢の命を預かる場合にしか使えないので、これを医療に、という視点が発生するとは思っていませんでしたが、私も迂闊に例に挙げていましたので。失礼しました。)

> その程度の精度なら現在でも達成できているんじゃないですか。フォーナインならたったの1万回に1 回であり、ファイブナインでもたかだか10万回に1回です。1年間に行なわれる医療行為の合計なんてものを概算すれば、多分達成できていると思われます。今求められているのは、もっともっとゼロに近いものであると感じています。

ちょっとリスクを浅く計算し過ぎましたか。[99.99999%]くらい? (1000万に 1回)

実は、フレーム爆発問題フレーム問題は、コンピュータだけではなく、失敗例の備蓄対策 (文書化、DB化)のタイミングでも、起きます。
事例が増えるのに従い、条件分岐が細密化し、分析分岐用の選択肢が増えると、事例の想定条件パターンという意味で、人間が考察する項目の組み合わせが増えるので、想定条件が等比級数的に増加してしまいます。

上記の9の数が増えるのに伴い、実際の想定される治療施術選択肢の数も増えるはずです。
実際に失敗例を備蓄していくと、どこかで条件を刈り込まない限り、フレーム爆発問題フレーム問題の発生を避ける事が出来なくなってしまいます。

また、「不注意」は人間が意識して行うものではないため、既知のパターン以外は避けえません。
もし、未知の内容を避ける事ができたら、予知能力という事になっちゃいますし、もし、防げる、と思っているのなら、それこそ、そこに後認知バイアスが発生している、という事になります...。(気をつければ、防げる、と思ってしまう事が、まさに、後認知バイアスですね...。)

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100619#c

*1:この関係で、医療関係のカテゴリ名を「医療向上」とする事にした。