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起訴行為に関する、脅迫罪の法的構造(まとめ)。

先日も 権利行使の意思なく訴えを起こす旨の言及をするのは、違法行為。当たり前の事だと思ってましたが。 - luckdragon2009 - 日々のスケッチブック で触れましたが、ここでいったん総括しておきましょう。
条文は以下の通り。

   第三十二章 脅迫の罪

(脅迫)
第二百二十二条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html

よって、基本的な構成要件(1項条件)としては「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫」する事を指します。その際に、合法的な行為でもある起訴が、この条件に当てはまるか、ですが、以下の構造になります。
基本的には医療行為などで身体に干渉する行為*1と、同じ構造になっています。
まず、起訴すると相手に告げる行為ですが、「相手を畏怖するに足る害悪の告知*2」となります。
次に、権利行使としての合法行為である、起訴行為の実施に至った場合ですが、この行為が合法的権利であるが故に、実際に脅迫罪の構成要件の条件を満たしていても、合法的権利の希求のためなので、この条件が成り立った時だけ、違法性が阻却されます。
このために、実際には脅迫罪の構成要件を満たす、起訴の告知という行為が、実際に起訴の実施に移った場合のみ、違法性が棄却されて合法行為、つまりは罪ではなくなります。
医療でも、人に傷を負わせるような行為(医療に伴う行為)が、医療という人に治療を与えうる行為として、資格を持ったものの正当な行為のみが、違法性を棄却されていますので、これと同じ構造です。


つまり、単独で「人に訴えるぞ、と告知する行為」は、実は脅迫罪となってしまう、という事になります。


ここら辺は、刑法の基本的性質、違法行為の構成要件としての定義、条件の当てはめ方を知っていないと、なかなか難しい処がありますね。一番最後に、私が基礎的な学習に使った書籍を挙げて、記事を終わります。
興味があれば、図書館などで借りて読んでも良いし、購入しても良いと思いますよ。
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*1:元々、身体に傷を負わせる行為は刑法に於いて違法行為ですから。

*2:つまり、罪として成立する。