luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

捕鯨は産業保護策からプロパガンダ策へ走り、そして消えてゆく。それは、幸いかもしれず...。

元々、調査捕鯨の成立の源泉を知る人にとっては、釈迦に説法かもしれないが、書籍『[捕鯨問題の歴史社会学―近現代日本におけるクジラと人間]』などで述べられているように、捕鯨というものは、実は日本本来の鯨捕りとは遠いところにある商業捕鯨*1になり、そして、それはその後、調査捕鯨、実際には調査を目標とした、形を変えた商業捕鯨となった。
よく、日本の調査捕鯨が、調査を題目としての商業捕鯨と外国から揶揄される事があるが、実はそれは、誤りでもなんでもなく、正鵠を射た意見なんである。
特に、少し調べただけだが、どうやら90年代には、実際に鯨肉の供給が追い付かなくなり、調査の名目で捕獲枠を拡大なんて事もやっている。
反対国の「鯨は知能が高い」なんて噴飯ものの論も変だが、日本の主張も、それに劣らず変なんである..,。


我々日本人が、捕鯨について議論すべき事 - 勝川俊雄公式サイト』に記事があったので、少し調べてみたが、下記のように、実際の捕鯨産業が今後復活する事は、現実的に言って無理そうである。
例えば、これ。民間企業の捕鯨産業への再参入、復活はないのである。

南氷洋商業捕鯨をしたがっている民間企業はない
母船式の南氷洋捕鯨をするには、大規模な資本と技術が必要になる。日本でその候補となるのは、ニッスイ、マルハ、極洋などの大手水産ぐらいである。彼らは、商業捕鯨への再参入はしないと明言している。ほとんど話題にもならなかったが、「参入しない宣言」の意味は大きい。

http://katukawa.com/?p=3964


...そして、極めつけがこれだ。

鯨肉消費の減少(ランニングコストの赤字)


鯨肉の消費が落ちている。日本人は一人1年当たり、100gも食べていない。特に、若者層に至っては、食べたことがない人間は大半を占めている。このまま時間が過ぎれば、ますます需要は減るだろう。「鯨肉売れない→在庫が増える」という悪循環なんだけど、「鯨肉の需要が無いから捕獲数を減らします」とは言いづらい。ここ数年は、シーシェパードを口実に、捕獲を減らせたのに、それでも在庫が増えている。
鯨類研究所のプレスリリースは、シーシェパード一色。シーシェパードのブログみたいな様相を呈している。以前は、妨害行為をメディアに流せば、「日本の捕鯨を応援しよう」と鯨肉の消費が伸びたのだが、最近は視聴者も飽きてしまって、売り上げが伸びない。去年はシーシェパードのことをさんざん報道して、シーシェパードの船を破壊したのに、鯨肉の売り上げが3割も落ちてしまった。

http://katukawa.com/?p=3964

特に『ここ数年は、シーシェパードを口実に、捕獲を減らせたのに』『以前は、妨害行為をメディアに流せば、「日本の捕鯨を応援しよう」と鯨肉の消費が伸びたのだが、最近は視聴者も飽きてしまって、売り上げが伸びない。』のくだりは、失礼だが失笑してしまった。
いや、日本の調査捕鯨も、これではシーシェパードを笑えまい、何の事はない、シーシェパードを当てにして、プロパガンダを煽っているのは、日本側も同様ではないか。


まあ、ここまで読めば、今後の捕鯨産業の復活はないこと。また、それゆえに、今の調査捕鯨をさっさと止めてしまった方が、実際にはお金も無駄にならずに、正しい策、だと私は思う。
件のブログでも、下記のように結論づけられている。

モラトリアムを解除して、南氷洋商業捕鯨復活というシナリオには無理があるだろう。
調査捕鯨を継続する上での最大の問題点は、シーシェパードではない。根本的な問題は、調査捕鯨には、必然性も、大義名分も、将来のビジョンも、何も無いということ。逆に、モラトリアム解除後のビジョンさえしっかりしていれば、調査捕鯨の赤字なんて、どうでも良い話である。反捕鯨団体は、調査捕鯨の赤字を強調しているが、そもそも、調査捕鯨は、調査なんだから、単体の事業が黒字でなきゃいけないという話ではない。調査自体が赤字であっても、その先に、より大きな国益に結びつく明確なビジョンがあれば、何ら問題はないのである。問題は、そのようなビジョンが何もないという点なのだ。
商業捕鯨再開のビジョンがない」、「鯨肉売れない」、「代船建造できない」という、ないないづくしの調査捕鯨を、国民のシーシェパードへの反感を利用して、なんとか延命してきたけれど、それも、もう限界だろう。かといって、「文化、文化」とさんざん煽った手前、「鯨肉が売れなくて、金が無いから撤退します」とは水産庁的には言いづらい。そこで、シーシェパードを上手に使って、調査捕鯨から手を引こうと画策しているというのが、現状だろう。

http://katukawa.com/?p=3964


なかなか、皮肉な幕切れではあるが、私個人の考えでは、ある意味、自業自得のような気がしなくもない。主張したいのであれば、もう少し理論的に納得できる主張を、国際社会にはしたいものであるし。


今日は、ちょっと後味の悪い、反省が必要な題材だったが、まあ、こういう、自分の身を鏡に映して反省する、という行為も自己成長のためには必要な気がする。
...大きな図体をした餓鬼ではあるまいし、大人であれば、もう少し懸命な行動をしたいものであるから。

参考書籍
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*1:よく誤った類似例としてあげられるのは、沿岸捕鯨や、イヌイット捕鯨